2 他を思う愛の力(1/2)

 1日24時間のほとんど眠っているような、道太郎の状況は22年間続きました。彼が倒れたとき6歳だった次男は、兄である彼の願い通り医師となりました。次男の人生は兄の希望の人生であり、兄は愛する弟に自分の夢や幸せを見ていましたから無償のパイロット役をしていたのでしょう。そして、その喜びが彼を生かす誇りやエネルギー源となっていたのだと思います。

 次男がまだ医大生だった頃、休みが終わり学校に戻る際、その後ろ姿にいつも道太郎は、

「ユ~ウ ユ~ウ カァワ~~ィソォ~~~オ、オウゥチィニィ~~イィレェナァ~~イ(ユウユウかわいそう、おうちにいられない)」

「オォニィ~~チャアンヲォ~ナァオスゥノニィ~オイィシャアァサァ~~ンニィナァルゥ~~アリィ~~ガァ~タァ~~イィ~(お兄ちゃんを治すためにお医者さんになってくれるあり難い)」そう言って泣きました。