1 生きる力 活かす力(3/4)
手術が終わり植物状態のままの息子を抱えながら、死んでしまおうと考えて病院中をウロウロしていたときと何も変わっていない、成長していない情けない自分の姿を直視する力さえ今は失せている我が心の弱さと比べ、道太郎の生への思いは!! 息子の生命の力強さに圧倒され、打ちのめされた出来事でした。
さらに道太郎の口が懸命に「ス……」と発音しようとしていたので、手術の跡だらけの顔に耳を寄せると……彼は「ス……キ……」お母さんのことを、私のことを「ス……キ……」と伝えてくれたのです。「だから平気だよ、よく分かっているよ」とでも言いたげでした。そしてまた、生きていることが「ス……キ……」と必死に言っているようでもありました。
「ごめんなさい!! ミッタロごめんなさい!!」
私は我慢できず号泣してしまいました。すると、動かないはずの手で彼は私をゆっくり撫でてくれました。
あらゆる機能をつかさどる脳の大切な部分を1/4も切除した息子の脳は、虫食い状態ではあったものの、脳足りんではなかったんです。私に息を止められ、彼の中で死が直ぐそこに迫ったとき、まるで電気回路が急に繋がり、灯がパッと灯ったような瞬間を間のあたりに見せてくれたのです。