3 あきらめないで、がんばろう!
講演会の後に行われた個別の面談は、いつもと全く違ったものでした。誰一人自分の身体の苦境や愚痴を訴えなかっただけでなく、私の前に座って、私が口を開く前に口々に言いました。
「センセイ、がんばります! がんばって病気を治します」
「夫ともう一度やり直します」「商売、がんばってみます」などなどと、自発的に宣言して帰る人ばかりとなったのです。
絶対治ったり改善する見込みのない子を8年以上も育ててきて、それでも希望を捨てずに、よいと思われたことはすべてチャレンジし、成果を上げた母親の前では、どんなに重い病気の人でも、「あきらめる」とは言えなかったし、言ってはいけないとわかったのでしょう。改めて、もう一度自分に立ち向かって病気にチャレンジし直そうと決心した人もいたと思います。実は私もその中の1人でした。
その日、心がせかされて飛ぶように家に帰って道太郎に向かって言いました。
「道太郎、絶対あきらめないで、がんばろうね!」
あの母子は私たちのためにも苦労してきてくれたんだと思います。私の中の小さな灯を再びかき立て、強くしてくる役目をしてくださったのです。ほかの人たちみんなにもね。
ありがとう! ありがとう! ありがとう!
いつまでも何回も、私は心の中で繰り返しました。
そしてこういう人たちにもっともっと出会い、助けになるための活動をしなくてはと思いました。