2 胎児がもろに背負うリスク(2/2)

 それから4か月たって、再び講演会に親子で参加してくれました。母親の手に抱かれた女の子は、8歳8か月になっていました。なんと首が座っていたのです! かわいいパッチリした目で、私をしっかり見つめてくれました。

「京子センセイよ、わかる? 京子センセイに会えてうれしい?」

 とお母さんがたずねると、コックンと頷いてくれたのです。嬉しそうにお母さんは続けて言いました。

「この子、今では、口から栄養を摂れるようになったんです。それまでは鼻からチューブで摂っていたんです。この子は自分の口で言えなかったけど、それはとても嫌なことだったようです。鼻をつまもうとすると、チューブを使われると思うのか、とても嫌がるのです」

 お母さんはこの女の子の鼻をつまんで見せてくれると、彼女は顔をしかめながら首を振って逃げようとしました。生まれつき植物状態だった女の子の反射反応! 生まれたときからリスクを持ってしまったのに、リスクが減ってきたとはっきりわかる仕草でした。もちろん小さな小さな進歩にしかすぎませんが。

「今までよくあきらめなかったね! 偉いなあ、お母さん!」

 とても崇高な場面に立ち会った感動で、私はあとの言葉をなくしてしまいました。うれしくて、悲しくって、涙がどうしても止まらなくなってしまったのです。

 この日、講演会の会場に来てくださった人たちは、シーンと固唾かたずを飲むようにこの場面を見守っていましたが、1人、2人の間から拍手が上がり、それが合図であったかのように感動の拍手が大波のように広がっていきました。その感動が会場いっぱいに広がったとき、参加者の目にはうっすらと光るものがありました。それは感動の涙だったかもしれないし、希望と活路を見いだした人の心の輝きだったかもしれません。