5 結婚して看病し合えばいいじゃない(2/2)

「センセイ、私ね、この人から結婚してくれって申し込まれた夜、この人に手術の跡を見せたんです。それでもいいってきかないんで……」

「あらっ、それじゃもう他所よそへお嫁にいけなくなっちゃったじゃないの」

「えっ、センセイ、そんなんじゃないんです」

「あのね、私が見たところ、あなたの病気よりこの人の病気のほうが重いんじゃないの。どんな名医でも草津の湯でも治せない恋っていう病気、これにかかっちゃったんだから。この人もう助からないわよ。2人とも病人同士なんだから一緒になって看病し合えばいいんじゃないの」

 こんなやり取りがあって、半年くらいしてから2人は結婚しました。その頃には歌子さんはすっかり元気になっていたし、この先とても死にそうにない様子でした。

 歌子さんの中にはしっかり生き抜く本願寺ができていました。それから8年過ぎましたが何も言ってきません。元気にやっているのだと思います。

 彼女が56歳、彼が40歳になっているはずです。年とともに、だんだん年齢差が縮んでいるんじゃないでしょうか。

 この一件以来、センセイのおかげでよくなりました、と言われることが、どんなに心地よくてもきっぱり、しっかりそれをはねのけて、自力本願寺を自分の中に建立させるよう指導していくことを、今まで以上に徹底するようにしています。