よっちゃんに会いたくて、会いたくて
きょこちゃんの町には氏神神社があって月に2回縁日がありました。氏神様にももちろんお願いしていましたが、きょこちゃんは教会と氏神様が違う神様だと思っていませんでしたし、とにかくどの神様にもお願いしておいた方がいいと信じていたのです。そして、氏神様の縁日できょこちゃんの本や集めた切手や、田舎でもらった古銭など、大切なものを全部売りました。お金にして、よっちゃんのために使おうと思ったからです。
ある日、そのお金の一部で電車に乗ったきょこちゃんは、みんなに内緒でよっちゃんの入院している病院へ行きました。
待合室には入らずに、よっちゃんの病室までこっそりとよっちゃんのお顔を見に忍び込んだのです。よっちゃんが今どういう状態なのか見ずにいる限界を超えていたのです。
誰にも見つからず首尾よくよっちゃんの部屋にたどり着きました。ところがドアを開けようとした途端、後ろから声をかけられてしまいました。婦長さんでした。きょこちゃんはガッカリしたのと、よっちゃんを心配する心の両方でシクシク泣けてきてしまいました。婦長さんは泣いているきょこちゃんに
「お姉ちゃんね? ちょっとだけ妹さんのお顔見る?」
と言ってドアを開けて
「ここからよ、眠っているから起こさないようにね」
と、入口からベッドが見えるように1~2歩導いてくださいました。
ベッドの上のよっちゃんは眠っていました。陽に焼けたお顔が今は青ざめて口に酸素マスクがかけてあります。天井から点滴が繋がっていて、ゆっくりポッポッと1滴ずつよっちゃんの身体に送られているのが見てとれます。
「さぁ、もう、安静にしてあげましょうね」
婦長さんはドアを閉めました。
「ホントはもう少し元気になるまで会いに来てはだめなんですよ。元気になったらお呼びしますからね」
そうおっしゃいましたが、きょこちゃんは上の空でした。
ベッドの上のよっちゃんが、なんて小さくなっちゃったのかしら! なんて非力に弱々しいことだろう! 今にも消えてなくなってしまいそうに見えるよっちゃんの姿に、きょこちゃんは何も考えられなくなっていました。
どこをどう歩いたのか分かりませんが気付いたら教会に来ていました。マリア様がイエス様を抱いて静かにきょこちゃんを見下ろされていました。
「神様、マリア様、お願いします。よっちゃんを死なせないでください。よっちゃんを治してください。どんなことでもしますから・・・・・・お約束します。どんなことでもしますから・・・・・・」
きょこちゃんは泣きながらいつまでも神様にお願いしていました。
(続く)