2 胎児がもろに背負うリスク(1/2)
それは、東北講演のときのことです。1歳ぐらいの赤ちゃんを抱いたお母さんが参加されていました。
赤ちゃんの首は座らず、目は左右チグハグな方向を見ているし、涎を垂らしっぱなしで、ときどき四肢をビクッ、ビクッと痙攣させていました。
小さな赤ちゃんと思われた子は、実は8歳4か月だと後で聞いて驚きました。先天性麻痺で心肺にも疾患があると言われている女の子でした。お母さんは、この子のためによいと耳にしたあらゆる治療を試みた、と言われました。
8年以上も! なんと8年4か月も!
リスクを持ったのはその子のせいではない!
まして母親のせいでもない!
いくつかのマイナス要因が運悪く重なって、自分が持つエネルギーだけでは賄いきれず、リスクを作ってしまったということです。いたずらに責任を追及して不幸な人生になるよりも、今できることを足し算しましょう、という提案を講演会でしました。脳を欠損している道太郎と比べれば ―――― という思いが頭の中にいつもあったからです。
たくさんのハンディを背負って8年4か月もの間、なんとしてもこの子をよくしたい、元気になってほしい、がんばって、がんばって毎日努力し続けたお母さん。脳への栄養という“足し算でリスクを返す方法”を、講演会をきっかけにスタートされました。