6 シャボン玉を一服(2/2)
「さあ、どれくらいかかるのかしら、1時間ぐらいなの?」
N江さんはいたずらっぽくニコッと笑って答えました。
「ストローで吹くんですよ、センセイ。最初は4時間かかりました。今では30分です」
「ヘェー、シャボン玉名人になったのね」
「最初の頃は、一つシャボン玉作ってパチッとはじけては壊れるのを見るたびに、あの男一日寿命が減った。パチッ。また一日減った、って思ってはシャボン玉を飛ばしてたんです」
「ひえーっ、恐ろしい! さぞ殺気立っていたことでしょうね」
不慮の事態が起こり、去っていった男性につらい思いを重ねていたN江さん。
「たぶんそうだったと思います。毎日毎日、思いを込めてシャボン玉を飛ばしていたら、家中湿っけてきてしまって……。ハッ、ハッ、ハッ、ハッ。でもセンセイ、そのうちシャボン玉を上手に飛ばすことが気に入ってしまい、熱中してやってました。ふと気がついたら言葉が出るようになっていたんです。昨日病院に行ったところ、リハビリのドクターにそっと言われたんです。シャボン玉吹くことがリハビリになったんだねって。だから今日はお礼にうかがいました」
N江さんは、過去のつらい思いを振り切るようにさばさばした様子で話しました。
ドクターのおっしゃることも当たっているけど、このお話をどのように思われましたか?
「N江さん、あなたはシャボン玉健康法の開祖よ」って言ってあげたら、彼女本当に嬉しそうな顔をしました。
さあ、あなたには何を一服のアイデアさしあげましょうか? そして何の健康法の開祖になりたいと思いますか?