奥さんと社長さんのあったかい心

「まあ、まあ、どうしたの? 云ってごらんなさい。楽になるから」

一部始終を聞いてから、

「あらまっ、クラスの子供たちのGスタンプ集めコンテストするなんて、考えたわね。でも、止めにさせられて、きょこちゃんの宝物を景品に使わずに済んで、よかったじゃない? おばちゃんも今日から応援してあげるから、そんなにがっかりしないで、おばちゃんは、景品はいらないからさっ! はっはっはは・・・・・・」

「でもぉ、食べ物のない子たちの、横取りしかけてただなんて・・・、ひどいこと・・・しちゃった・・・んですもん。グスン・・・」

「だって、きょこちゃんがしっかり働いたスタンプの分の方が多かったんでしょ? きっと、その方が食べ物がたくさんになって、よかったはずよ。さぁさ、クヨクヨしないで、がんばろうねっ!!」

「おじさんも今日から協力するよ」

とご主人。

それから1週間、学校は冬休みで朝からお肉屋さんに通いました。もう、明日はお正月です。お昼休みの少し時間が空いた時、ご主人と奥さんからお店に呼ばれました。

「きょこちゃん、どうもご苦労さま。もう今年は、これできょこちゃんのお仕事は、おしまい!!」

「えっ!! まだまだお店やるんでしょ? きょこちゃんのお手伝いいらないんですか?」

「明日はお休みだから、明日の分のジャガイモはもう皮をむかなくていいのよ」

「そ・・・う・・・ですか・・・・・・」

「やだやだ、がっかりしないでよ。ほら、お父さん、はやく渡したらっ!!」

奥さんは、ご主人を「社長さん」と言うのを忘れてるみたいです。

「わあっ! Gスタンプ、2冊も!!」

一瞬、大喜びで飛び上がってしまったきょこちゃん。

「でも・・・でも・・・、こんなにいただいていいの? お約束では1日1ページだったでしょ?」

「それはおじさんとおばさんも協力したからさ」

「えっ? 本当に、ホントに、ほぉ~んとにいいの?」

「そう! そう! はやく田舎のおばさんに送ってあげなさい」

「ありがとう!! ありがとうございまーす!!」

「あっ、それとね。コロッケ作りすぎちゃったから少し食べるの協力してくんないかなァ。それで、おあいこになるからさ」

大晦日のプレゼント

きょこちゃんは、Gスタンプとコロッケとを持って、意気揚々と家に帰りました。30個のコロッケは、家の職人さんたちに大いに歓迎され、お母さんは群馬のおばちゃんに電話をかけて、

「大晦日の昼にコロッケが残ってる訳ないのに・・・、人の情が身にしみますねぇ」

といきさつを話した後、きょこちゃんにかわってくれました。

「もしもし、おばちゃん!! おばちゃん、新婚旅行いけるのよっ!! Gスタンプ送りますからねっ!! 職人さんたちは、広告見せたら、きっとキツネの木の葉っぱの券だよって、言うんだけど。Gスタンプは、断然信用できるからねっ! 前にスタンプ送ったら、ちゃんと白いホーローのお鍋と取り換えてくれたもの。だから・・・もしもし、おばちゃん? 聞こえます? お腰が痛いの? もしもーし」

「うっううっ・・・・・・、ありがとさんねぇ。きょこちゃん、おばちゃん、今の話ですっかり腰は、治っちゃったよ。ありがとさんねぇ・・・」

おばちゃんとおじちゃんはGスタンプ2冊で換えてもらった温泉券を持って、雪で野良仕事ができないある日、新婚旅行に出かけていきました。

(おわり)