第4話『きょこちゃん、サンタクロースの家に行く』① (全3回)

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クリスマスの飾り売り

クリスマスまであと三日。きょこちゃんの家では職人さん達と総出でクリスマス飾りを売りに街に来ていました。お母さんもまだ生まれたばかりのよっちゃんをおんぶして、商店街で貸してくれた小さな売店に、朝から夜遅くまで手伝いに来ています。大工の棟梁のお父さんが、家を建ててあげた代金が払えない人から、お金の代わりに季節の造花をもらってきたからです。

「これを売らなきゃ正月の餅代も貰えなさそうだ」

と、職人さんの1人が言っていたのを聞いていたきょこちゃんも

「全部の飾りが売れなければ、お家には帰れない」と知っていました。

「あーあ、お弁当も食べちゃったし…お飾りを売るお手伝いはさせてくれないし……ジャマジャマなんて言われちゃうし…違う時には『おねえちゃんになったんだから……』って言われていたのに、これじゃ赤ちゃんとおんなじ……あーあ、つまんない……」

きょこちゃんはお気に入りの赤いオーバーを着て、お母さんが編んでくれた「ミトン」という毛糸の手袋をはめていました。ほんとうなら、すっかりポカポカで幸せ気分なはずなのに、心はどんどんつまらなくなってきました。

「あーあ、八郎おじちゃんが早くお出迎えに来てくれないかしら? 八郎おじちゃんにヒコーキしてもらって帰りたいなぁ」

お母さんの弟の八郎おじちゃんは大学生で、学校がお休みの時は新聞社でアルバイトをしていました。新聞社のお仕事は不規則で帰る時間が決まってませんでしたから、おじちゃん流に言うと

「出た時勝負だ!!」

で、何時に来られるか来てみないと分からない、ということのようでした。

「ねぇ、お母ちゃん。あとどの位でお飾り全部売れるの ?」

「そうね、思ったより人出が少ないから、これからどんどん売れるとしても……まだほら、こんなに残ってるわ」

お店の売り子などしたことのないお母さんは、今にも涙がこぼれそうなのを必死にこらえている様子で、悲しげに積んであるダンボールをかえりみました。

「はぁーあ」

きょこちゃんが何度目かの溜め息をつきかかっていた丁度その時のことです。人波の向こうに赤い大きな帽子が見えました。リン・リン・リン・リン・リン、鈴の音も一緒です!

「あっ!  サンタクロースだ!!  サンタさーん!!  サンタさん!」

サンタクロースは大きな白い袋をかついで、何か面白そうな足取りでこっちに向かって歩いてきました。

サンタさんに教えなくちゃ!

「ねぇ!! お母ちゃん!!」

お母さんは丁度その時、何人ものお客さんに飾りを売っていたので大忙し。サンタクロースには気づきません。

「あっ行っちゃう!  通り過ぎちゃう~~!!  きょこちゃんサンタさんに教えなくちゃいけないことあるのに! どうしよう!!」

まさに今、目の前をサンタクロースが通り過ぎていきました。そこできょこちゃんは考えるより早く、椅子代わりに座っていた木箱からぴょんと飛び降りると、一目散にサンタクロースめがけて駆け寄りました。

「ねぇねぇサンタさん!!」

ふり返ったサンタクロースは白いおひげと白い眉。(わぁ! サンタクロース!  サンタさんだ!!)服には何やら文字の書かれた布がはってありましたが、そんなこと意に介するきょこちゃんではありません。しっかと、サンタクロースの赤い上着をつかまえました。

「ねぇ! ねぇ!  サンタクロースのおじちゃん!!  あたしいい子のきょこちゃんです!! すっごくいい子という訳じゃないけど、大体いい子なんです。あっと……あたしのことをお話ししたいんじゃなくて……あの…ね…うちに今年赤ちゃんが生まれたの。きょこちゃんの妹で、よっちゃんなの。いい子なのよ。それでね……、サンタクロースさんにお知らせしなくてはと思っていたの。だって…もしまだ、よっちゃんのこと知らなければ…プレゼント届けられないでしょ?  だから……」

サンタクロースは白い手袋をはめた大きな手をノーノ―というように左右に振り、再び歩き始めました。

「あっ!!  ダメダメ。サンタのおじちゃん!! よっちゃんのこと覚えてくれなくちゃ!!」

サンタクロースは鈴をリンリンと振りながらどんどん歩いていきます。きょこちゃんも必死にサンタクロースの服につかまったまま付いていきます。

「ねぇ、サンタのおじさん。う~んと?  ♪♪真っ赤なお鼻のトナカイさんは~~♪♪ トナカイさんは、どおこ?」

はっと気づいて、きょこちゃんは聞きました。

「メリークリスマス」リンリンリン。

「メリークリスマス」リンリンリンリン。

きょこちゃんには応えずに、サンタクロースは鈴を振りながらメリークリスマスを繰り返し叫びます。

「はぁ~~っと……サンタさんは、きっと、わたしの言葉がわからないのね」

サンタクロースは北の方の氷だらけのお国に住んでいて、お伽の国の言葉や妖精たちの言葉しか話せないと、おじちゃんの読んでくれた本にのっていたことを思い出しました。こうなったら、きょこちゃんのとるべき道はただ1つだけ!!

「サンタクロースのおうちまで付いていって、よっちゃんの名前がいい子リストにのっているかどうか確かめなくちゃ!!」

(続く)

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