サンタさんのプレゼント工場

リンリンリン、リンリンリン、メリークリスマス! リンリンリン。

さぁどの位歩いたでしょう。いつの間にか街より少し外れの1つの建物の前に着いていました。

チーンジャラジャラ、チーンジャラジャラ、大きな音です。たくさんの人たちが座って、何やらとっても忙しそう。

「あっ、きっとここは、世界中のいい子たちにプレゼントを贈る工場なのね…」

きょこちゃんは足の疲れを忘れて喜んでぴょんぴょん跳ね回りました。気がつくと、サンタクロースの代わりに黒いジャンパーのおじさんが建物の横から出てきていました。

「お嬢ちゃん、どっから来たの?」

「あの…ね」

きょこちゃんはあんまり嬉しくて飛び跳ねていたので、ちょっと息が切れていました。

「あのね……きょこちゃんはおじょうちゃんじゃなくって……よっちゃんのお姉さんなのよ。ここはサンタさんのおうち?」

おじさんはちょっとびっくりしたようにきょこちゃんを見ていましたが、頭をポリポリかきながら、

「うーんと、なんていうか……サンタの家とは違うなぁ…」

「違うの? じゃあここはおじちゃん家?」

「うーんと、なんていうか……おじさん家かなぁ……」

「あ~ら、変なの! おじちゃん自分の家かどうかわからないの?」

チーンジャラジャラ、チーンジャラジャラ、さっきから大きな音はずっと続き、その中で座っている人たちは2人のことなど全く目に入らないように仕事をし続けています。

「ねぇ、おじちゃん。あの人たちはサンタさんの工場で働いている人たち?」

「あの人たち? ああ、あの人たちね。あの人たちはおじさんの店のお客さんたちだよ」

「何してるの?」

「パチンコしているのさ」

「パチンコ!? じゃぁいい子たちにプレゼント贈ってるんじゃないの?」

「…さぁ、ここじゃなんだから…あのさ…うるさいしさ…中に入ってお話ししようか…」

おじさんに促されて、おじさんが出てきた所に入りました。

2人のおじさんへのおはなし

中は大きなストーブがゴウゴウ燃えて、とても暖かく、ストーブの上のやかんからはシュウシュウ楽しそうに蒸気が上がっていました。

「ねぇ、おじちゃん、サンタさん知らない? サンタさんにねぇぇ……きょこちゃん、言うことがあるの……あっ!! サンタさんのお洋服!!」

なんとソファーの上にサンタクロースの赤い服が置いてあります。北の国のサンタさんは、雪のように融けてしまったのでしょうか!

「ねぇ、ねぇ、サンタさんは? サンタさんはどおこ?」

思わず不安になって、きょこちゃんは真剣なお顔で聞いていました。

「おーい、交代だよ!!」

部屋の奥から背の高いおじさんが出てきながら、そう言いました。

「交代?!!」

きょこちゃんは訳が分からず聞き返しました。

「そうさ、交代さ! 朝からぶっ通しじゃ、もたないからさ!」

「えぇっ!!」と、きょこちゃん。

「暮れのアルバイ……」

「おいっ!! 仕事終わったら早く帰れっ!!」

チーンジャラジャラのお店のおじちゃんが、背の高いおじちゃんの言葉をさえぎって言いました。それでも背の高いおじちゃんは

「まっ、ちょっと一服」

と言い、ドカッとソファに座りました。

「あっ」

きょこちゃんは、背の高いおじちゃんの下敷きになってしまったサンタクロースのお洋服を引っ張り出しました。

「何か飲むか? ココアはどうだい?」

「はい! きょこちゃんココアがだあい好き!! でもね、ビスケットをつけて食べなきゃならないんですもん、ココア飲むときは」

「はぁっ、そうですか…ビスケットもねぇ」

おじさんは、ちょっとおどけておじぎをして奥へ行き、お盆にカップとビスケットをのせて持ってきてくれました。ストーブからシューシューいっているやかんを降ろすと、カップにココアの粉を入れてからお湯を注ぎました。

「まだ熱いからフウフウして。もう少し冷めないと口を火傷するぞ」

「はい! ありがとう!!」

「じゃぁね、きょこちゃんがどうしてここへ来たのか、ココアが冷める間に話してよ」

「はい!! いいわよっ。でもね、きょこちゃん、ここに来たんじゃなくて、サンタさんのおうちに行きたかったんですもん」

「そうかっ」

「はい! そうです!」

それからきょこちゃんは2人のおじさんたちを前に、大工の棟梁のお父さんが家を建てたお金を貰う代わりに、造花やクリスマス飾りをどっさり貰って、それを売らないと職人さんたちがお餅を買うお金がもらえないことや、今年生まれた妹のことをサンタさんに教えないと、いい子リストに入れてもらえないことなどを一気に話しました。

「お父さんものんきな人だね、こんな小さい子がみんなのことをこんなに心配してるってのにさ!」

チーンジャラジャラ屋のおじさんが言いました。きょこちゃんは、ちょっとツンとしてお父さんをかばって言いました。

「あら、きょこちゃんのお父ちゃんは、のんきなんかじゃないもん! 交通事故にあって死にそうになっちゃったんですもん!」

「えっ?」

「おうちを建てた人がね、死にそうだったのよ。それでお父ちゃんは集金に行ったんだけど、どうぞお大事にってお見舞いおいて帰ってきましたって。どうして死にかかってる人からおうちを建てたお金をせいきゅうできるの? って」

最後のところは、お父さんがお母さんに話していた言葉でしたが、きょこちゃんは、お父さんが悪いのではないことを2人のおじさんたちにわかってもらいたくて、一生懸命話しました。2人はしばらく黙り込み、ようやく冷めたココアのカップをかき混ぜてから、きょこちゃんに持たせてくれました。

(続く)