生きることの丁か半(1/2)

 先の悲しいケースとは反対に、万事好転するケースもあります。

 海外勤務で交通事故に遭い、首から下がマヒしていた上、脳梗塞も起こし、再起不能と言われた53歳の男性。

 4年のリハビリ生活の末、車椅子に乗れるまでになって、何とか再度歩けるようになりたいと私の所にいらっしゃいました。だけど、なかなか思うようにならないでいるうちに、再び脳梗塞及び心筋梗塞を起こしはじめて、すごい不安にかられていたのですが、突然歩けるようになってしまったのです。

 足より気持ちの方が先に歩いているような感じで、喜びをみなぎらせながら、顔を輝かせて面談室に入ってきました。

 椅子に座るなり、この人はうれしそうに事故に遭った時、同乗していた36歳の現地通訳の女性(上司のお嬢様と結婚していたけれど、その妻は彼の看護をこの女性にまかせっきりでスキーに行ってしまったらしい。そして、その後、ずっと介護するのはイヤだということで離婚が成立していた)との間に子供ができて結婚することになったというのです。

 男の子が生まれたって連絡が入り、飛び上がって喜んだとたん、もう車椅子はいらなくなっていたことに気付いたのだと言います。

 えっ! ウッソーッ!

 でも、こういう火事場の馬鹿力的自己癒しをできるのも人の脳のすごいところなのです。

 きっと彼の、全善玉菌が、ドワッと出てβエンドルフィンに押されて動いたのかもしれません。

 「現金や財産は別れた妻に渡したので、すごく貧乏になったけれど、僕自身はとても豊かなリッチな感じなんです。もう一度生まれ変われたような・・・・・・。

 彼女はどんなに貧乏でも、僕さえ元気に生きてくれるなら地位も財産もいらないから、ひとりで畑仕事をしてでも僕を養うって、動かない時の僕の足をさすってくれながらボロボロと涙を流して泣きながら話していたんです。いつもね。

 その涙が知らないうちに僕の足の養分になっていてくれたのかなぁ。彼女は何の条件もつけずに子供を産んでくれたし、それは僕への最高のラブレターなんですよね。だから、僕は生命をかけて彼女を幸せにする! いい歳して恥ずかしいけれどもね。ハハハ・・・。」

 とおっしゃるちょっとはにかんだような彼は、まるで少年のように活き活きしていました。