サービスのプロ(2/5)
空港からツアー客の旅行カバンはバスに積まれホテルに到着しますが、乗せる時にカバンのチェック。そしてまた、着くと同時にひとつずつの確認がなされます。
個々の仕事のセクションに、個々の責任が課せられるヨーロッパらしいことですが、その時は、大柄な黒人ポーターが真剣な顔つきでひとつひとつカバンをチェックしながらホールに並べていました。
みているとちょうど遠目でもわかりやすいピンク色の私のトランクのところでバスのドライバーと何かもめているようです。
「そのトランク私のですが、何か問題でも?」
声をかけると、
「お客様のトランクベルトがこわれてはずれていたのです。バスドライバーは積んだ時、もうこわれてブラブラしていたと言うのです。」
「あら、出発する時に新しいのを買ったのに・・・。」
「それでしたら飛行機でしょう。航空会社のオフィスに苦情(クレーム)を知らせておいた方がいいですよ。とりあえずあなたのお部屋に運ばせますから。」
バスドライバーとポーターのふたりはホッとしたように顔を見合わせています。
「ありがとう!」
日本円にすると100円位のチップを彼の白い手袋にそっと渡しました。
「ありがとうございます、マーム。日本のお客様はデスクにクレームをおっしゃいませんが、是非おっしゃってください。帰りが心配ですから・・・」
彼の親切そうな顔つきに勇気を得て、
「あの・・・私電話で今のこと伝えられる程、英語力がないので、もしできたらあなたが言ってくださいませんか?」
「それでしたら、この私、ハンスにお任せ下さい。ハンスがすべて取り計らいます。」