3 道太郎との別れ(2/3)

 道太郎はそのままの状態で眠りに入り、ある朝息をするのを止めてしまいました。どんなにニコニコして! と呼んでももう二度と応えてくれなくなってしまいました。息子の22年間の戦いはこうして終わりました。最後の1年間を看とってくださった担当医師から、

「医師としては信じがたい不思議な患者さんでしたが、20年以上寝たきり状態なのに床ずれが1つもないきれいな身体なんて……看護がよかったことはもちろんでしょうが…それにしてもこんな例は見たことがありません。まるで空に浮いて生きてきたような、そんな感じです」

 このようなコメントをもらいつつ、その医師のご配慮で次男が兄の臨終の脈を取り確認をしました。彼女も駆けつけてくれました。病院中のスタッフから見送られ、道太郎の亡きがらは家に戻ってきました。

 静かに寝ているような息子と共に夜を過ごしながら、息をしていないだけで、息をしていた時と何ら変わっていない状態の息子。生命いのちが去ってしまった今、さっきまでそこにあった生命いのちはどこから来てどこへ行くのかということを考えました。