3 脳の勘違い、あーあ勘違い(2/2)

 そこで、とりあえず専門医を勧め、息子さんに脳内栄養素A、B、C(※)を与えることをお母さんに伝えました。

「こんな姿の息子を人に見られてどうしたのって聞かれたらはずかしくって………おまけに精神科だなんて……」

「勘違いシンドロームとでも言っておけばいいじゃない」

「センセイ! 冗談じゃないんですよ!」

「もちろん私は本気よ! すっごく本気なんだから」

 でもこの母親は、こんな言葉を残して帰っていきました。

「すぐ治せる薬を教えてくださらないのなら仕方ありません。無駄足でした」

 あーあ、それって勘違いもいいとこよ! どんな方法を使ってもすぐに治るほど単純な狂いじゃないから多重人格になっているんじゃない。根本的治癒力を呼び戻さなくてはならないのに! お母さんも勘違いシンドロームなのよね。

 こんなとき無力な自分が情けなくなります。あなたの息子さんはうちの道太郎と違って、間違っているとはいえ正すことが可能な脳をフル装備してるじゃないの、とまで言ったのに……。

 あの息子さんの行く末を考えると眠れませんでした。

 眠れないまま、朝、散歩に出かけたのでした。


※脳内栄養素A、B、C第四章ー7 脳のダメージにはとにかく脳の栄養素を入れてみて!(1/2) 参照