2 馬鹿力の正体

 

 人間が生命の危機に直面したときに出す「火事場の馬鹿力=瞬時に強度の興奮状態が起きて無我の境地をひらく」のは、何の力がそうさせるのか、まだすっかり解明され尽くしていませんが、性ホルモンの一種であるテストステロンが動き、視床下上核に影響が及んだ結果、脳内物質ドーパミンが引き金になってノルアドレナリンを作り、そこから分泌される“アドレナリン”がその正体だと言われています。

 オリンピック選手が神業かみわざ的記録を出したり、ランナーズハイといった状態になる時も同じことが起きます。興奮剤を投与して人工的に火事場の馬鹿力を引き出して記録を上げることができるのも、このランナーズハイのメカニックが解かったからです。ただし、人工的興奮を起こし続けるとその反作用で脳内物質発生のバランスの崩れから病気を起こすこともあります。そのためスポーツ界はドーピングを禁止しています。

 スポーツ界で利用したいこのランナーズハイに似た馬鹿力はスポーツとは縁のない非力な凡人にも訪れるのですが、この力は普段自由に使うことはできません。前述したような特別な状況で発揮する力です。