11 脳足りんを憎んで人を憎まず(3/3)
「奥様のほうが脳の状態がよさそうなので、奥様に説明しておきますね。あなたがもし、おやりになりたかったら奥様からご指導を受けてください」
夫人に話をしました。道太郎のことから、脳のエネルギーの話、脳の設計図の話、脳の活性化の話、一日に5回以上言う3つの言葉のレッスンに至るまで、1時間ほどの講義を終ったとき、私だけでなく、話を聞いていたみんながホッとしていました。
「センセイ、センセイのおっしゃったことよくわかりました。私は実行していきたいと思います。ただ今まで人の言うことなど一切聞かなかった主人が、私の言うことに従ってくれるでしょうか?」
夫人は心細そうな様子で聞いてきました。
「言われたとおりしなければ、脳足りんのまま死んでいくまでよ」
私ははっきりと声に出して言ってしまいました。
「馬鹿にして!」と罵声が飛ぶと一瞬思いました。
「アッハッハッハッハッ ―――― !!」
彼は大声で笑い飛ばして2人を驚かせて、痛みのおさまった感じで帰っていきました。
それから1週間に1回のペースで通所して、1か月ほどで変形がとまりました。治療院ではありませんから特に何かするということではなく、面談室で脳活性化が進んでいるか会話を通じて実行してみただけです。現在は、ときどき気候の変わりめに痛みが出るぐらいまでに変わってきました。
あの自信満々の彼から連絡が入ってきます。
「ヤクが切れた! 栄養素送って下さい」
などとジョークが言えるように変身しつつあります。
バレンタインデーに、見事なバラが50本も届きました。添えられたカードには、『京子センセイへ家内が贈れと言いました。脳足りんより』と書かれていました。