10 脳足りん症候群(2/2)
「うーむ、しかし、ここに通っとる人で治ったという人がいて、その人の友人が家内の友達だったので聞いて来たんだが。その人の話ではガンの末期であろうと、難病であろうと治しているそうじゃないか。現にその人も、膠原病だったのがよくなったと言っとったな。リウマチは治せんのか」
さあどうだ、と言う調子で言いました。
「ええ、治せません」私ははっきりと言い切りました。
「バカッ、だから時間の無駄だと言ったんだ!」
彼は夫人のほうに向かって強い口調で吐き捨てるように言いました。
「じゃあ、なんだね、他の大変な病気は治せても、リウマチだけは治せんと、そういうことなんだね」
彼の口はますますへの字になっていました。
「いいえ、そうは言っていませんわ。あなたは治せないと思うんです」
「じゃあ、なにか、他の人のリウマチは治るが、私のリウマチは治らないとでも言うのか」
「その通りです。ご本人が治したいと望んでいる方でないならね」
「私が治したくないとでも、思っとると言いたいのかね!」
怒りはますます激しくなりました。
「あなたは一流の方で、一流の専門家に治療をお受けになっていた、それでもよくならない。ダメでもともと、と素人の私に治してもらおうといらっしゃった。信用してないけどね。一流人の身体がお前ごときに治せるのか! できるものなら治してみやがれっていう感じでね」
「ム………」図星の彼は一言もありません。
「病気を治すのはあなたご自身であって、私ではないのね。私はあなたに治す力を呼び戻す考え方をお伝えするだけなの。そのご当人が、ご自分で治そうとするんでなくて、私に治してもらおうと考えている。できるならやってみなさいって考えながら。しかも信用していない私にね」
「アンタ、私を侮辱したいのか! えっ!? 怒らせたくてわざとそんなことを言うとんのか!」
肩を震わせて言いました。