3 脳の栄養素を!

 人間にとって一番重要なのは栄養です。少量しか食べられない道太郎に効率よく栄養を与えるため、世間でよいというものはありとあらゆるものを試しました。試行錯誤の日々でした。ある時、医学誌でアメリカ人医師のエビデンス(証拠)に基づいた植物性脳内栄養素フォスファチジルセリンという物質の研究論文を読みました。「コレだ!」とひらめきました。脳の栄養にこだわったのは五体満足なのに身体を動かすことのできない理由は脳だからです。身体のすべての機能は脳がつかさどっている以上、脳を活性化すること以外ですべての身体機能を向上させる方法はないという確信を勉学によって持っていた私は、このとき出会った植物性脳内栄養素が、安全で重要な助けになると直感したのです。

 ところが、いざ入手しようにも一般的には流通していませんでした。手がかりを見つけ、原料をサンプル分として少量入手することができましたが、製剤化して常に入手する方法はありませんでした。

 もとより私にとっての栄養素とは、生死をかけた息子道太郎の日々のかてとなり得るものでなくてはならず、ゆえに真剣に取り組み、利益など考えないクオリティ本位のものでなくてはなりません。なので、とうとう自力で作ることになってしまいました。

 薬学については元々素人だった私が多くの薬学書や医学書を勉強し、大勢の薬学者や医学者に協力していただいた賜物たまものとして、フォスファチジルセリンのカプセル入りを作ることができました。このとき得ることのできた有形無形ゆうけいむけいの栄養素は、今でも私や家族、また、たくさんの仲間たちの脳の健康を守る術として活用しています。

 けれど出来上がるまで8か月の過酷テスト中は、時が経つのが遅くって遅くって、とうとう完成したときの嬉しさは今でもはっきりと覚えています。