7 脳の構造

 

 人間の脳は大まかにいうと、脳幹、旧皮質、新皮質からなる三層構造になっています。

 “脳幹”は、生存に不可欠な機能をつかさどる器官であり、呼吸、食欲、排泄、睡眠、種族保存本能といった生理的機能のほか、自己防衛本能、快感、美意識などといった働きの司令塔(センター)でもあり、人間が本来持っている自己正常化機能(ホメオスターシス)を十分に発揮させるコントロールセンターでもあります。人間として生きていくために必要な機能を持っているところで“知・情・意”の“意”の司令塔です。脳死というのはこの脳幹の死をもって判定されます。

 “旧皮質”は、情動脳じょうどうのうと言われ、情熱や感情といった面を支配している脳であり、“知・情・意”の“情”の司令塔です。

 “新皮質”は、人が誕生するときにはゼロの情報ファイルに、さまざまなデータを蓄積していく場所で、理性や知性をつかさどる“知・情・意”の“知”の司令塔です。

 脳幹と旧皮質を取り囲むように新皮質が発達して人間の脳を形成しています。道太郎の場合はこの三層にまたがって欠損部分が点在したため、脳を見る限りでは呼吸すら自力ではできないし、感情も記憶も知性も、ほとんど持たないだろうと現代医学上では判定されていました。