第6話『きょこちゃん、大学に行く』② (全5回)

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ヒヨコのピョーコ

「なぁんだ!! 随分早いじゃないか、おやっ、ほおずきは? おっ! なんだなんだ、ヒヨコか? ヒヨコ買ってきたのか? どれどれ?」

おうちに着くと材木屋のおじちゃんとお父さんがお酒を飲んでいて、きょこちゃんのヒヨコの箱を覗いて笑いながら言いました。

「ああやっぱり!! なっ! オスだよこりゃあ!!」

「あらあ、オスって男の子でしょ? 違いますよーだ。ヒヨコさんはきょこちゃんとおんなじヒヨコって子がつく女の子なんですもん。ヒヨコさんはぜぇーんぶ女の子なんですよ。おじちゃんだめねぇ」

「そおかぁ? まぁ、オスでも女の子でも何でも何日かはいいオモチャになるだろうよ、ハッハッハッ」

きょこちゃんは知りませんでした。ニワトリの卵が孵化した時、メスはとっておいて育てるのですが、オスはほとんどを破棄処分にするため、その一部を屋台でオモチャとして売っていることを。

そして大抵のヒヨコは2~3日しか生きていないことを。

ですから幸いなことに、材木屋のおじちゃんが言った意味にも気づかずに済みました。

「ねぇおじちゃん、ヒヨコさんは赤ちゃんなのにどおして寝ないでず~っとピヨピヨ鳴いているの? よっちゃんは赤ちゃんの時ずーっとずーっと寝てばかりいたのに」

「はて? はて、きょこちゃんのどおしてが始まったナ・・・」

5歳になってからきょこちゃんの「どおして?」は多岐に渡っていました。

あまり真剣に聞くので大人たちは真面目に答えなければならず、少々警戒されてもいました。

今回の「どおして?」には若い衆が助け舟を出しました。

「ヒヨコは母親の心臓の音が聞こえると安心して寝るよ。奥さん、目覚まし時計あります?あったら貸してください」

と、お母さんに頼みました。目覚まし時計を持ってきてもらうと、それをタオルにくるみました。

 「ほら、こうしておくと母鳥の心臓の音だと思って・・・・・・、見てみな、ヒヨコは安心して寝るから・・・」

と、どうでしょう、本当です!! 時計のコチコチという音をお母さん鳥の心臓音だと思ってヒヨコは見る間に鳴き止んで、時計をくるんでいるタオルにくっついて眠ってしまいました。

「あーよかった。ありがとう! 若い衆さん!」

ヒヨコを見せたかったよっちゃんも眠っていたので、きょこちゃんはヒヨコさんと、ヒヨコさんが母鳥だと思っているタオルにくるんだ時計の入っている箱を枕元に置いて、とっても満足した気持ちで眠りにつきました。

翌朝は大騒ぎ!! よっちゃんが喜ぶこと喜ぶこと。

ヒヨコにピョーコと名前をつけてお部屋の中で追いかけっこです。

エサだってヒヨコ屋さんに教わったとおり、ちゃぁんとヌカを水で練ってあげました。けれどもピョーコは見向きもしません。

「ほんとうだわ。ヒヨコ屋のおじちゃんの言った通りね。これじゃエサがぜんぜん無くならないし、大きくだってならないわ!」

きょこちゃんはニコニコして考えました。

お母さんからいつも

「たくさん食べないと大きくなりませんよ」と、よっちゃんが言われていたのを聞いていましたから、

「大きくならないって、ヒヨコ屋のおじちゃんが言っていたもの。ほんとうに、ヒヨコのままね。うれしいなぁ」と思いました。

追いかけてははしゃぐよっちゃんがお昼寝している時は、ジッとお座りしているピョーコちゃん。黄色い小さなフワフワの毬のようです。

「なんて! なんて! 可愛いんだろう!!」

よっちゃんとピョーコをかわるがわる見ながら、きょこちゃんは慈しみ深いマリア様のような気分を味わっていました。

突然のお別れ

悲劇がやってきたのは翌日でした。

喜んでピョーコを追いかけていたよっちゃんが

「ピョーコ、ネンネしちゃった!!」

と言うので、きょこちゃんがピョーコを見ると足を上にしてひっくり返っています。

「ピョーコどおしたの?」

慌てて抱き上げると今までだったら可愛くもがいていたのに、身体全体がグニャ~リとしてピクリとも動きません。

「ピョーコ!! ピョーコ!!」

よっちゃんも一緒に

「ピョーコ!! ピョーコ!!」

―――この頃よっちゃんは何でもきょこちゃんの口真似をするようになっていて、みんなから「オウム」と言われていました。―――

「ピョーコ!! ピョーコ!!」

「ピョーコ!! ピョーコ!!」(よっちゃん)

いくら呼んでも少しも動かず、可愛くピヨピヨ鳴いていたくちばしも青くなってしまいました。

「お母ちゃん!! ピョーコがね!!」

「お母ちゃん!! ピョーコがね!!」(よっちゃん)

おかあさんはちょっとコワゴワとピョーコを見ました。

「あーあ、やっぱりすぐ死んじゃうのね、だからねぇ~ヒヨコはね・・・弱くてダメなのよ・・・」

「ピョーコ、トコトコ駆け回ったから疲れちゃったんじゃない?」

「疲れちゃったんじゃない?」(よっちゃん)

「ううん、死んじゃったのよ、さぁ、お庭の隅に埋めてあげましょう」

「ええ!! 埋めちゃうの?」

「埋めちゃうの?」

「そうよ、死んじゃったから、埋めてあげなかったら可愛そうでしょ」

「だって・・・だって・・・、埋めちゃったら、もう遊べなくなっちゃう」

「あのね、こんなに暑いんだから、このまま置いといたら腐っちゃうのよ」

腐っちゃう!! と聞いてきょこちゃんは急に悲しくなってきました。

「うっうっうっ、うわぁ~ん!!」

「うわぁ~ん!!」

「よっちゃんのおばかあ! まね泣きしないでよ!!」

「うわぁ~ん、おねがぶったぁ~」(おね=おねえちゃん)

「ぶってないじゃない!! うわぁ~ん!!」

「うわぁ~ん!!」

「さぁさぁ、2人とも泣かないの。ヒヨコはどうせすぐに死んじゃうんだから・・・・・・。埋めてあげましょう」

ピョーコは庭の片隅に小さな穴を掘って埋めることにしました。穴の底にピョーコを横たえ土をかけようとして、きょこちゃんはまた心配になってしまいました。

「ねぇ、おかあちゃん、ピョーコが目を開けて土の中に埋まってたらびっくりするんじゃない?」

「びっくりするんじゃない?」

ピョーコはただ眠っているように愛らしく見えましたから、起きた時自分が真っ暗な土の中に埋められていたら、どんなに恐いだろうと思ったのです。

「いったん死んだら2度と目を覚ましたりしないのよ。だからびっくりもしませんよ。さぁ、ヒヨコにお別れをしましょう」

「ふ~ん」

「ふ~ん」

さっきまで動き回ってピヨピヨ言っていたのに、まるで眠っているだけのようなのに、もう2度と目を覚まさないなんて不思議だなァと思いながら土をかけました。

(続く)

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