死ぬのを決める丁か半(3/5)
そして、最初に戻るけれど、どうしたものかって私の所へ聞きにみえたのです。
本人は本気で死と直面し、悩んでいらっしゃるのだけれど、こんな相談にみえるようでは答えはもう決まっているも同然です。はっきり答えを出すのは自分自身でしょう。
「やっぱり奥様はあなたを愛していらっしゃると気が付いたってこと? それで、またしっかり夫婦の絆を強く生きようとなさるの?」
「いいや、そうじゃなく、僕はガンですよ。いつ死ぬか分からない。だったら今、離婚しなくっても僕は確実に先に死ぬ。だから今のままでいた方が有利だって考えているんじゃないかナ、妻は。」
「なんてことおっしゃるのよ! そんな訳ないじゃない! あなたが心配で別れられないんじゃあ・・・・・・。」
「そうだといいんですが。今まで一緒にいるんでよく分かるんです。妻は15年前に僕が別れてくれと言ったこと、理由は知らないと思うけど、今でも根にもっています。妻はとてもキチッとした人です。すごく正論をはくんです。だからこの15年間、僕を決して許してはくれなかった。そのうえ、自分に不利になることは絶対にしない。でも、その分計算もキチッとするから・・・・・・。絶対、離婚はしてくれないでしょう。そういう奴なんです。だったら、彼女の前に二度と顔向けはできない。もちろん妻のいる自分とは一緒になってくれないでしょう。そうでしょう? 男としては最低だなぁ・・・・・・。」
「じゃあ、奥様に誠心誠意彼女のことをお話してみたら、本当にそうなりたいのなら伝わるはずよ。」
「センセイは妻を知らないから・・・・・・。もし話したら万事終わりですよ。彼女にも迷惑がかかる。」