ノーモアピシャ

ある雨の日の夜、「今日一日も大変だったなぁ」と思いをめぐらしながら、駐車した車の中からボーッとウィンドウに当たる雨の滴をながめていた時のことです。

 こういうシトシト雨って気が落ちます。ザァーッと降ればマイナスイオン化するのに、シトシトではセロトニン(元気ホルモン)を作りにくくって暗い気持ちになります。どうせお腹も悪玉菌が優勢です。

 外を歩く人は、誰も無口で(―なんだか演歌みたいです)、私が車の中でふさぎこんでいるのなど気にもしていないし・・・。

 家もなく生活の面倒見てくれる人のいない私は、この広い世界にひとりぼっち。もしも倒れた時はどうするの!(恥ずかしいけど)貯えもないし・・・・・・。

 こう考えると、どおっーっと落ち込んでしまいます。

 自分が寄りかかれる人もいないし。

 大変な一日が終わっても、褒めてくれたり慰めてくれる人もいない―――日中は人に囲まれているからそんなこと考える暇ないけれど・・・・・・。

 そうやって、『自分はかわいそう病』にかかり始めた時、車の前の自販機にパトカーが止まりました。何か調べているのか? 雨でくもる窓を手で拭いて(・・・これも演歌・・・・・・)のぞいてみるのだけれど、水滴がすぐに見えづらくしてしまう。小笠原代表がキーを持って帰っちゃった後だから、ワイパーを動かして雨をはらえません。

 ああ、じれったい。はっきり外が見えない。

 その時、なぜかパーッとひらめきました。

 ひとりぼっちでさびしいな、心細いなって思うし、それを助けてくれる人もいない。貯えもないし、頼れる人もいない。何もない私でも、すぐに出来ることが、ひらめいたのです。

 私と同じようにさびしい人の保健薬(役?)には、なれるってひらめいたのです。手で振り払うのには大変な水滴も、ワイパーなら『シャカ、シャカ』って振り払ってくれます。―――つまり水滴払いのプロですね。

 辛いことがあった時、手で払っても取れないって嘆いていたって始まらない。

 いっそのことワイパーになって、他の人の分まで払ってしまえばいい。

 シャカ、シャカ、シャカ。

 そうだ!! もう、シトシト雨だって平気。

 いつの間にかいなくなっていたパトカーのことも忘れて、勢いよく車のドアを開けて外に出たら、車の下で雨宿りしてたノラ猫が、「フギャー」って怒声を出して飛び去っていった。もしかしてシッポでも踏んでしまったのかな?

ごめんなさい。



  雨の日だって
  きっと
  どこかで
  恵みの雨だって
  喜んでいる人がいる。
  そうおもうと
  うれしいね。
  雨が窓をうつ時もワイパー人になったら 
  きっと誰かを助けられる。
  そう思うと
  うれしいね。
  自分の心に
  雨がずーっとふっていても
  そんな自分を
  喜ばすこと
  思いつけるって
  うれしいね。