一枚のトランプは人のプロの作
私は講演会の時「トランプ」を配っています。ひとり1枚ずつ。
えっ? 1枚貰ってもゲームにならない? でもちょっと待ってください。
あなたに配られた1枚が足らないとゲームにはならないでしょ。
そうなのです、あなたに配られた1枚が足らなかったらゲームにはならないのです。だから大切な1枚―――大切なひとりだって気付いて欲しい。
そして、1枚のトランプを見ながら、人生ってゲームみたいなものだって考えてみることにしたら悩むことも減るかもしれません。
今日は勝った日、昨日は負けた日・・・。
プロギャンブラーだって、勝つ日もあれば負ける日もあります。でも、プロギャンブラーは素人と違ってそれでキャーキャー騒いだりはしません。肩をちょっとすぼめてみせるだけ、勝っても負けても、なにくわぬ顔でまた次の日にチャレンジします。
大事なのは、また明日、チャレンジできるということなのです。
あなたの今日のゲームはどうでしたか? 勝っても負けても肩をちょっとすぼめて―――。
さぁて、人のプロめざして、明日もまた新しいゲームをしましょう!
―――そう気付いて下さったらうれしい―――
配るトランプは1枚1枚手作りされたH芳枝ちゃん製のもの。
彼女は出生時、事故で慢性マヒになり、不自由な身体なのですが、ずっと自立して一人暮らしを送る他の誰よりも自由で大らかな心の持ち主です。
最近は年老いてこられた御両親のお世話をしながらがんばっています。
「最近、父親が『年とるってやだねぇ、手が自由に動かなくなって・・・・・・』なんてグチを言うもんで、お父さんなんて70過ぎてからじゃない手が不自由になったのは!だから新米だもんで苦になるのよ。あたしなんか、生まれた時から不自由なんだから。慣れているから平気なんよ、って笑って言ったんです。」
―――3年前にはじめて出会った時に聞いた彼女のセリフ。その時から何か彼女に作って欲しくってお願いしたのがこのトランプです。
もちろん、トランプを作ってくださっている芳枝ちゃんも絶対に欠けてはならない大事な1枚を持っている人です。
私は今にどっさり働いて、研究して、彼女の曲がった身体をのびのびできる細胞改良薬をぜったいに作るからって決めています。
そんな考えを伝えたら、ありのままを受け入れ、人一倍努力してきた彼女が、
「私のことより、もっと他の困っている人のために研究してください」
と言ったのです。逆に励まされてしまいました。
あなたも、トランプを手にすることがあったら、芳枝ちゃんとその周囲で彼女を愛し、支え続けている御家族や仲間がいるのだと心をはせてみてください