1 他力本願じゃだめなの(2/4)
彼女はさらに続けて話しました。30代で離婚し、それ以来一人暮らしをしていること。兄嫁さんから「あなたは過去に水子を出しているから婦人科系の病気にとりつかれている」と言われていることや、その兄夫婦は自分が一生懸命働いて貯めた財産を欲しがっているらしいといった悲惨なことを、まるで他人事のように、実に淡々と顔色一つ変えずに(これ以上悪くなりようのない顔色をしていたのですが……)話しました。
これらの話を一気に終えると、苦しそうにおなかを抱えて前かがみに身体を丸めました。ずーっとしていたイヤーな臭いはますます強くなって、顔をしかめずにいるのが難しいほどでした。私は顔をしかめないように気をつけながら、
「ところで、今おっしゃった通りになりたいの? なりたくないの?」
彼女は一瞬ポカーンとした表情を見せました。私の所へ訪ねてきて、初めて見せた表情の変化でした。
「もちろん死にたくないし、入院もしたくない、苦しみたくないに決まってます。だからこうして、ここへ来たんじゃないですか。センセイはもう助からないと言われた病人を治してくれると聞いて来たんです」