2 いいの、いいの、夢の国なんだから
一歩足を踏み入れたディズニィーランドは現実にはありえない世界、完全フェイクの世界です。フェイクでありながら本物よりも本物の世界。その世界に移住し、ミニィーちゃんのファンの立場になってどっぷり楽しんでしまう。そんなとき、私はふと、ディズニィーの世界の裏側をのぞいてしまいます。どこを見ても細かい注意と気遣いを感じさせてくれるからです。建物の色も手前は淡く、遠くに行くほど濃い色使いがしてあり、遠近感をはっきりさせたり、川や池の色も、パラマウント映画のオールカラー映像を見るような真っ青なエメラルドグリーンに着色してある。そのとき夢の国の住人になった私は着色してあるのではなくて、ディズニィーランドが誕生したときから、川や池はエメラルドグリーンに染まっているものと思っています。
友人とディズニィーランドの中のホーンテッドマンション(幽霊館)に入るために列に並んでいたとき、周囲を見回していた友人が見つけて言いました。
「あら、あのシダ珍しいわね、なんていう種類かしら?」
「ああ、あれね。あれはホーンテッドマンションファーン(シダの英語名)よ」
「じゃ、あの木は?」
「ホーンテッドマンションツリー」と私は答えました。
次の場所に移動してビックサンダーマウンテンの前に着き、列に並びます。友人はまた質問しました。
「あの花は何というのかしら?」
「あっ、あれはね、ビックサンダーフラワーなの」
「じゃ、あの木は?」
「ビックサンダーツリーよ」
「あらっ、さっき同じ木をホーンテッドマンションツリーって言ったじゃない?」
友人は怪訝な顔をして言いました。
「いいの、いいの、気にしなくってもいいのよ。ここは夢の国の中、ディズニィーランドよ。何でもできるし、どんなふうに考えてもいいのよ」
私は平然と答えます。
「あなたみたいに、徹底できる人見たことないわ」
友人は半ば呆れて、半ば羨ましそうに言いました。