11 脳足りんを憎んで人を憎まず(2/3)

  そこで私は助け船を出しました。

「あのね、あなたの性格の悪いのは“脳足りん”からきていると思うのね」

 これを聞いた彼は、もっとブリブリしてきました。その姿を眼の端に見ながら私は続けました。

「あなたはずーっとエリートで戦い続けるためにエネルギーを費やし、ご自身の力だけを信じてきたあげく、病気になってしまった。病気になったら、ご自分の思うように治せない。それって、許せないって気持ちになってイライラしてる。これって当たり前なのね。行動はできても、ご自分の脳内能力について何も知らない、わかろうとしていない。そういう人の脳は、きっと栄養不足でサビついていると思うの。だって、人を喜ばすことで補充できる“ご褒美ほうびホルモン”すらもらっていないんですもの。当然、自然に治す力、痛みを止める力すら出てこない状態なほど、エネルギー不足、栄養不足になっているの。だから病院でも治らないのよきっと。

 そう! あなたの病名は、リウマチという名を借りた“脳足りん病”だと思うの。性格はその人の身体を写す鏡だから、脳足りんは性格もサビさせているのよね」

 彼に向かって私はさらに言いました。

「今までの性格の悪さや病気は、実は脳足りんが原因だったのよ。よく世間で言うでしょう、『脳足りんを憎んで、人を憎まず』ってね」

「では、主人の脳足りんを改善すれば、病気も、それから、あのう、性格も治ってくると……?」

夫人は夫の身を心配して尋ねてきました。

「でもこの様子じゃ、おやりになれないじゃないかしら?」

「さっきから黙って聞いていれば人のことを、ノータリン、ノータリンて、何だと思っとるんだ! ノータリンでも何でもいいから、早く治してみろ!」

 彼は怒りで体を震わせて言いました。その言葉を受けて夫人が答えました。

「だからあなたは、脳足りんだとセンセイはおっしゃっているのよ。ご自分の手で、センセイから方法を教えていただいておやりにならなければ……」

 この夫人は普段、きっとこんなふうに夫に立ち向かったことはなかったと思います。夫人の顔はとても生き生きしていました。