お友達の作文
それから1週間。滝田さんは、誰とも口をききません。国語の時間に、
「お友達の事を作文にしてみましょう」と先生が仰いました。次の時間に、1人ずつ読むことになりました。
「俺の友達はヒーちゃんだ。ヒーちゃんは勉強が嫌いで俺も嫌いだ」
―――ストウ君
「俺の家は、―――汽車だ。俺の家に、わぁステキと来るやつがいる。ばーちゃんや、かーちゃんが大喜びで油でイモを揚げた。屁が出て困るから、もう来ないでほしい」
―――千原君
「あらっ、通り道なんですもん」と口をとがらせる、きょこちゃん。次々にみんなが読んでいって、
「今度はきょこちゃん、どうぞ」
「はい!」
「私には、お父さんとお母さんがいます。足すと2にんです。滝田さんは、お母さんがいないで、お父さん1人だけだと、みんなが言っています。1にんです。
2と1は、1しかちがわないので、だいたいおんなじです。だから、きょこちゃんも滝田さんも、ほとんどコジみたいなものだと思います。だから、仲良しになりたいです」
みんなクスクス笑ったみたいですが、きょこちゃんは平っちゃらでした。
「はい。次、滝田さん」
「はぃ」
「このまえ・・・図工の時・・・画用紙をもらったけど、やぶらなけりゃよかった。おしまい・・・」
滝田さんは、小さな声でそれだけ読むと、顔を真っ赤にして座りました。
きょこちゃんは、嬉しくて嬉しくて、滝田さんをギュッとしてしまいました。
その日から、毎日2人は一緒に、きょこちゃんの家に帰るようになりました。滝田さんのお父さんはテキヤさんなので、いつもお留守だからです。滝田さんはとても乱暴で、ガツガツ食べたり、しかめっ面をするので、イヤだなと思うこともあるのですが、きょこちゃんの妹のよっちゃんやみぃちゃんには、決して乱暴なことをしません。ほんとはやさしい子なんだわ、ときょこちゃんは思うのです。
1ヶ月もすると2人は、「フサ子ちゃん」、「きょこちゃん」と呼び合うようになりました。
フサ子ちゃんのお髪は、よく洗ってとかすとホントはサラサラでした。
みんなでおやつ
フサ子ちゃんが家に寄るようになって、変わったことといえば、
―――おやつです。
きょこちゃんは、以前から給食のパンにおかずをはさんで、5才のよっちゃんと2才のみぃちゃんに持って帰っていました。それを3等分して、おやつにしていたのです。
今では、それが4等分になりました。それを森永ミルクココアと一緒にいただきます。
お母さんは、お店で忙しかったので、2人の妹はそれをとっても楽しみにしていました。
「いただきます」
今では、フサ子ちゃんも一緒に「いただきます」をしています。
でも・・・お皿にきちんと分けたおやつを、フサ子ちゃんはたった一口で、パクッと食べてしまうのです。食べるのが遅いよっちゃんは、大っきな目をパチクリして、びっくり顔。
誰のことでも、何のことでも、「アーヤン」としか言わないみぃちゃんは、
「アーヤン、アーヤン」と手をたたいて大喜び。
続けて、きょこちゃんのお皿の分も、手を伸ばしてパクリ!!
またまた、「アーヤン! アーヤン!」と大喜び。
おやつの時間は、とっても賑やかになりました。
(続く)