2. 夢と現実
こうしたケースは遠回りにみえるけれども、しっかりと本人が病原的心理の重圧をはずさないと解決しないのです。
心は脳が作るものというのは御存知のことと思います。
心因的問題から、脳内ホルモンの分泌状態が乱れて自律神経のコントロールができなくなると、一番先に消化器に症状が出やすいのは、脳内系ホルモンと腸内系ホルモンがイコールで動くからなのです。
「何か気にかかっていることがあるのね?
ここで話してくださったことは、他には知られることはないから安心して何でもお話してね。」
―――と言っても、すぐに本人が病因を思いつくとは限らないのです。
思いつかないことの方が多いかもしれません。生真面目で几帳面で、すべて自分で責任をとろうとするような責任感の強い人が陥りやすいと言えます。自己防御力が誤作動して、心が苦しむより身体が苦しむ状態になる心因性シンドロームとも言えるけれど、人間の心と身体の関連はとても重要なのです(共棲菌のことを思い出してください)。
T美さんにそのことをお話したら、夢に出てくる人は職場で出会った恋人で、5年越しの交際なんだと打ち明けてくれました。
彼には妻子があるのでお互い、大人の付き合いと割り切っていたのだけれど、去年、休日に偶然家族連れで買物中の彼をみかけてから、夢をみだして、体調を狂わせたらしいのです。
「みかけた時、身体が震えて、吐き気までしたんです。休日は絶対にデートをしない、今までの5年間の理由をみせつけられたようで・・・・・・、もういやだ! 苦しいって、そんな風に感じて・・・・・・。それと、幸せそうに見える彼の家族に自分はすごく悪いことをもたらす悪魔になっちゃったような気がして・・・。」
でも、その打ち明け話をした日から、すっかり元気を取り戻して胃ケイレンも収まったようなのです。
きっと本人の潜在脳が答えを手に入れたので、身体を痛めてまでその問題を封印する必要がなくなったからなのでしょう。
私たち人間は、考えている以上に心呼吸は大切なのだと知った、T美さんのお話でした。