第十八話『きょこちゃん、銀座へ行く』④

「こんな大人に愛った(あった)から」第十八話
きょこちゃんの「愛」たっぷりのストーリー。
白髪の紳士と商談をスタート (続き)
(よかったら!! ですって!!)
「これ、不二家のショートケーキでしょ?!!」
「そう、よくわかったね。不二家さんは店の隣だから女の子に1番人気のあるケーキを買いに行ってもらったんだよ。おじさんじゃわからないからね。それで、おじょうちゃん、ショートケーキ好きかな?」
「ハイ! たぶん。あの、ね、今日初めてショートケーキ食べるんだけど、きっと大好きです! それと・・・ね、アタシ、おじょうちゃんじゃなくて、きょこちゃんです!」
「そうか、そうか、よかった。じゃあ、きょこちゃん、おあがんなさい!」
「ハイッ!」
なんて、なんて、素敵なんだろう! 夢のようにきれいな苺のショートケーキ!
(こんな真夏に苺がはさんであるの!)
フンワリ焼かれた薄い黄色のスポンジは、2段に分かれていて、間には、雪のように真白いなめらかな生クリーム。そして、真っ赤にうれた苺!
がはさんであります。上にも生クリームが、たっぷりデコレーションを作り、そして!そして! その中央には、ルビーのような赤い苺が誇らしげに乗っています。
家の白黒テレビでは、色までわからなかったけど―――。
「すごーく、きれい!」
声に出して、つい言ってしまいました。毎週見てる『ディズニーランドアワー』という番組(野球中継が長引くと中止になっちゃうけど)のスポンサーの不二家。そして・・・コマーシャルに出てくる、あのあこがれのショートケーキが目の前にあるの!!
笑顔できょこちゃんを見ていた紳士に、ニッコリ笑いかけると、
「いただきまーす。」パクッと食べようとフォークをショートケーキにさしました。
とたんに、
「あっ! いけない!」食べるのを止めました。
「どうかした?」
「あのぉ、このケーキいただいて帰ってもいいの?」
「えっ? どおして? 嫌いなの?」
「うぅん、そうじゃないの。そうじゃないんだけど・・・」
「なに? 言ってごらん。」
あまり紳士が熱心に聞いてくれるのできょこちゃんは話し出しました。
小学校のお給食に出るパンを、よっちゃんとみぃちゃんに毎回持って帰ることや、それを2人がいつも楽しみにしていて、下校の放送が家で聞こえるので、ずーっときょこちゃんが帰るまで玄関の段々に座って待っていること。毎週3人でみる不二家のコマーシャルのショートケーキを、いつかお姉ちゃんが、きっと、きっと、きっと、きっとね、食べさせてあげると約束してたことなどなど―――。
「それじゃあ、きょこちゃんは、よっちゃんとみぃちゃんのお姉さんなんだね」
「ハイッ! そうなの。2人もいるから、すっごく手が掛かるけど、妹ってかわいいのよ。だから、ショートケーキ、おみやげにしたいの。」
「じつはね、ショートケーキなら、まだどっさりあるんだよ。帰りには箱に入ったのを、持ってってもらおうね。だから、妹さんのを心配しなくていいから、この2つはおあがりなさい。」
「わあーっ! うれしい! ホント?!! ホントに、ホントに、ホントなの?」
「うん、うん。」
夢みたい。ひと口ほおばると、甘酸っぱい苺と、甘~いトロッとした生クリームが口中に広がります。もったいないなぁ・・・・・・1人でいっぺんに食べちゃうの。夢中で食べているのをニコニコながめていた紳士は、
「ちょっと失礼。ゆっくりおあがんなさい。」―――と席を立ちました。
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