第十七話『きょこちゃんと新婚旅行』③

「こんな大人に愛った(あった)から」第十七話

きょこちゃんの「愛」たっぷりのストーリー。

きょこちゃん、ひらめく!

 「ねぇ、おばちゃん!! これっていつもお肉を買うとくださるGスタンプのこと?」

「そうよ。」

きょこちゃんの目は、草津温泉(群馬県)1泊2日、2名様、スタンプ2冊というところにクギ付けになっていました。

「あーっ!! ひらめいた!!ねぇ、おばちゃん! きょこちゃん、お手伝いしたらGスタンプをくださらないかしら?」

それから2週間、きょこちゃんはお給食のない水曜日と土曜日、お肉屋さんの裏で、奥さんと一緒にジャガイモをむいていました。

最初は、皮ムキで指までむいてしまいましたが、4時間ずつむいていたら、今はとっても早くむけるようになっていて、きょこちゃんのむいたジャガイモで、作られたコロッケをみんなが知らずに買っていくので、少し誇らしく感じられていました。

それにスタンプもいただけるし!!

 ホクホクと喜んで、きょこちゃんはスタンプを数えていました。

クラスの皆も、とってもよく協力してくれていたので、もうすぐに6ページになりそう!! 1冊10ページだから、もうちょっとだわ。あと、たった14ページ!!

温泉旅行は、20ページ、2冊!!

 トン、トン、トン。

「はぁ~い」、ドアのノックにきょこちゃんは、元気よく答えました。もうすぐ、おばちゃんを温泉に行かせてあげられると思うと、嬉しくてたまらなかったのです。ドアをノックしたのはお母さんでした。

涙がとまらないの……

「ちょっと、きょこちゃん、聞きたいことがあるのだけど・・・あらっ!! それはなあに?Gスタンプじゃないの!!」

「そうなの。実はね・・・」

「やっぱり、あなただったのね・・・。今日、学校の役員会でスタンプの整理をしていたら、あなたのクラスだけGスタンプ、1枚も集まってなかったのよ。須藤クンのお母さんが、『へんねぇ、学校に持たせたはずなのに』とおっしゃったの。で、あなたの隣の席でしょ?須藤クン。だから、あなたが関わっていなければいいけど、一応、聞いてみようと思って帰ってみたら、あなたが、そんなにどっさりGスタンプを持っているなんて!! クラスの皆のをとったりしたんじゃありませんよね? 学校でベルマークやGスタンプを集めて、備品と取り換えているの、知っているでしょ? それに食べ物のない子供たちへの援助に使うことだって・・・知っているでしょ?」

「あぁ、どうしましょう!!」

「あのね・・・きょこちゃん、人の物をとったりなんてしてないもん。クラスの皆にGスタンプを集めるコンテストをして、景品をあげることにしているんだもん。1等賞は植物図鑑で、2等賞は・・・」

「そんなこと!! どんなにいけないことか、わからなかったの?」

「だって・・・だって・・・」

「だめ、だめ、いけません。明日、お母さんがみんな学校に持って行きます!!」

「あーあ・・・・・・」

 きょこちゃんは、自分がどんなに悪いことをしてしまったのか、考えてみました。以前に、どうしてもホーローのお鍋――白いピカピカしたきれいなホーロー製――が欲しかった時は、自分のためだったから、だぁれにも頼らず、Gスタンプをセッセと1年以上も貯めて換えてもらったけど、今度は自分のためじゃなかったんですもん。

でも・・・食べ物のない子供たちのヤセコケた写真を思い出しました。くぼんだ大きな眼が、じっとこっちを見ている顔が浮かびます。

 ジャガイモの皮むきでいただいた分まで、学校にいってしまうけど、仕方ないわねぇ。

食べ物がない子供たちのためになるもの、よかったじゃない。でも・・・でも・・・だんぜん、がっかりしちゃった~。

 がっかりしちゃいけないんだけど・・・、食べ物がない子供たちにきょこちゃんが、働いた分のスタンプで食べ物がいって・・・・・・、喜んでいる様子を必死に思い描こうとしましたが、逆に、温泉券を手にした時のおばちゃんの喜んでくれるお顔が浮かんでしまいます。

「うっ!うっ!」自分のことで決して泣かないきょこちゃんも、今度ばかりは涙がどんどん出てきてしまうのでした。

「1から出直さなくちゃ・・・」

「どうかしたの、きょこちゃん?」

「はい?」

「いえね、さっきからずーっと黙って、命がけみたいな顔つきでジャガイモむいているから・・・、いつもなら、歌ったり、しゃべったり、元気いっぱいなのに。」

うるさいほどなのにね、とは、奥さんはいいませんでした。

「何でもありません。平気です!!」

そう返事したものの、でも、きょこちゃんのお口はひくひくして、泣きたくないのに涙がひとりでに出てきてしまいました。

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