第十六話『きょこちゃん、お葬式に行く』②

「こんな大人に愛った(あった)から」第十六話

きょこちゃんの「愛」たっぷりのストーリー。

おばさまの弾丸トークのはじまり

 「あのう・・・・・・おばさま・・・・・・、今日はお母さんは来られないのでありますぅ。・・・・・・ですもんで、わたくしきょこちゃんがお世話をさせていたらくまぁす。」

きょこちゃんは舌をかみながら一生懸命敬語で話そうとしましたが、あまり上手くはいきませんでした。

「なあに? おや? まぁ? なんて? 軽々しいこと! 今どきは人情も地に落ちたじゃわねぇ。 これから世の中はどうなることやら。」

「はい。・・・・・・。」

「そんなにいちいち返事をしなくてよござんすよ。」 「はい!!」

「お葬式や通夜のように人が亡くなった席ではそんなに元気いっぱいの返事をするもんじゃありませんよ。結婚式じゃあるまいし・・・・・・。」

「・・・・・・は・・・・・・い。」

きょこちゃんは声をひそめて返事をして、ちょっと首をすくめました。周囲を見るとみんな暗い顔で静かに動いています。確かに大きなお返事をする者も大声で話す人もありません。

おばさまは来場者1人1人がよく見える位置に椅子を持ってこさせました。そこにデンと腰掛けると扇子を出して煽ぎながら、隣に座らせているきょこちゃんの脇を時々つっつきます。

「ちょっと、あの、派手派手しい女を見てご覧。あれは誰だろう? あっ、後からくるご亭主、ああそうか、あれは美容室チェーンをやってる・・・・・・その後添えか・・・・・・。商売があたっているもんで景気がいいと見える。あの喪服は英国やの仕立てらしい・・・・・・し、けど、なんてまあ、ものを知らない・・・・・・。無知をさらけ出してるようだねぇ・・・・・・。派手派手しく2連真珠のネックレスをしてるだろぅ?

 葬式のような不幸ごとが重ならないように、身に着けるものを2連にするもんじゃあないのを知らないんだねぇ。それにどうだろう、あの靴。あれもいただけないねぇ、バックスキン(裏革)を履くもんだよ。あんな飾りをつけたりして・・・・・・まぁ、あの男もあれまでだわねぇ、先代を大事に看取った先妻が亡くなって、まだ3年も経ってないのにあんな女を入れるようじゃ・・・・・・。」

 おばさまには、目に入る人を痛烈に批判する癖があります。そういう話の内容の真偽のほどはともかくも、おすまししてもっともらしい顔つきをしている大人たちの裏話はきょこちゃんには面白くもあったのですが・・・・・・。

 きょこちゃんはお母さんからおばさまの話には絶対口をはさんではいけないと、何回も念を押されていましたから、自分の感想も言うことができません。でも考えるのは自由なので話を聞きながら自分なりの意見を心に思っていました。

 (はではでしいって言ったって、きょこちゃんはステキな人と思うけどなぁ・・・・・・。でも真珠のネックレスの2連はいけないことなんだって覚えておこう!)

 「あらやだ! あの女(ひと)、わたくしと同い年なのに!! 上手に年をかくしてるつもりだけど・・・・・・そうはいかない・・・・・・!! あの髪型はどう見ても似合っていない。しかも、年をごまかすのに、かもじ(付髪)をつかっているんじゃない? ・・・・・・うんそう、境目が見えるじゃない・・・・・・それに洋服で来るなんて・・・・・・。髪だけ若作りしたって身体のラインが年寄りっぽく丸見えになるじゃないか・・・・・・。知恵がないねぇ。まあ、女学校時代から浅はかなところがあったからねぇ・・・・・・頭隠して尻隠さずっていうところだよ。まったくのところ・・・・・・。」

(確かにあの髪形は変だわ。まるでキャベツのうえにカボチャを重ねているみたい・・・。)

 「今入ってきた男(ヒト)、代議士になってふんぞり返ってるけど・・・・・・、全部・・・・・・親の七光りのくせに・・・・・・あの子は小学校6年の時に教室でお漏らししたこと忘れられないのよっ・・・・・・しかも・・・・・・大・・・・・・だったんだから・・・・・・ふん・・・・・・気取っていたって過去が消えたわけじゃない・・・・・・。」

(あん・・・・・・かわいそうに・・・・・・いつまでもおもらしのこと、言われるなんて・・・・・・)

 「それ、それ、(きょこちゃんを突っつく)あの2人、親子ほど年が離れているんだから・・・・・・。いくら養子のなり手がなくても、なにも年下の若造と結婚させなくったって・・・・・・今に店を潰しちまうよありゃぁ・・・・・・うん・・・・・・。」

(店をつぶすかどうか分かんないけど、若い旦那さまと幸せそうだし、あの女の人のお顔きょこちゃん、好きだなァ。)

 「ほおら、やっぱり、きた! あの夫婦は特に縁続きじゃないのに・・・・・・葬式でも何でも、人が集まるとこに必ず来たがる。来るのはいいが・・・・・・娘の自慢話をし過ぎますよ。・・・・・・うん・・・・・・。一人娘によい婿さんを見つけようと必死なんだろうけど・・・・・・スーパーマーケットだなんて言ったって、元は行商あがりだし・・・・・・成り上がり者の家に養子になんて行く者なんてあるもんか・・・・・・ちゃんとした家の男子なら、小糠3升なんとやらさ(小糠3升あれば養子に行かない)・・・・・・ふん・・・・・・。」

(やさしそうな、2人じゃない・・・・・・養子に入ったら大事にしてくれそう!)

 「なんと! ・・・・・・オールドミスがやって来た! なんてことよ・・・・・・医者かなんか知らないけれど・・・・・・女が1人でいていいわけない・・・・・・いつになったら身を固めるのやら・・・・・・うちの人も生前言ってた・・・・・・子供の頃から理屈っぽくて生意気だったそうだよ・・・・・・ふん。(ここできょこちゃんの顔を一瞥)そんなことじゃ、いつまでたっても一人前じゃありませんよ・・・・・・うん・・・・・・。(この人は大学病院の医者で、おばさまは小娘のように言いましたが既に50半ばでした。)先に嫁いだいとこの結婚式に悔し泣きしてたじゃないか・・・・・・」

(あらっ! あの時きょこちゃんいたけれど、この人すっごく喜んでいたみたい・・・・・・。泣いた理由は感激してのようだったけどなァ・・・・・・)

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