第十五話『神様との約束』⑤

「こんな大人に愛った(あった)から」第十五話

きょこちゃんの「愛」たっぷりのストーリー。

タイガーは身代わりになったの!?

 次の日の朝のことです。どうしてだか分かりませんが家のシマトラ猫のタイガーが庭で死んでいました。鼻から少し血が出ている他はどこにもキズがありません。隣のおじちゃんが

「車にでもはねられたんだろうよ。でも必死でどうにか家まで来て、こと切れたようだね。」

と話してくれました。そばで黒猫のケニヤが悲しそうにタイガーをなめています。

「まぁ可愛そうに、もしかするとよっちゃんの身代わりに自分を捧げたのかもしれない」

と裏のおばちゃんが言いました。

「え? みがわり?」

「そう、身代わりといって、自分の生命とよっちゃんの生命を取り換えっこすること・・・・・・だからよっちゃんは絶対大丈夫よ。」

「そんな!! 迷信じみたことを!!」とおじちゃん。

 そのあとすぐに病院から電話があり、よっちゃんの身体のポリオの菌が陰性となっているということ、つまり、ポリオじゃないということが判明したと報せてきたのです。お母さんは、わぁーっと泣き出しました。そしてすぐによっちゃんの所へ駆けつけることにしました。お医者さんからの説明があるそうなのです。

 病院ではとても長い時間待ちましたが、お母さんは別人のように元気になって帰ってきました。

「あと1週間様子を見て、陰性が続くようなら体力がつき次第帰れますって!」

「わぁ! よかった!! よかった!!」

「やっぱり、タイガーが身代わりになってくれたのね。」

「何でもいいや! よかったね!! きょこちゃん!」気がつくとご近所の人たちが口々にそう言って喜び合ってくれました。近所の人たちの手でタイガーは近くのお寺さんで供養してもらい土に埋めました。みんなこのシマトラ猫がよっちゃんの災難を持って行ってくれたと本当に思ったのかもしれません。みんなは丁寧に手を合わせお線香を手向けました。

 翌日きょこちゃんはまたもや・・・・・・病院へ忍び込みました。今度は誰にも会わず、こっそり病室のドアを開けることができました。ドアからのぞくと・・・・・・よっちゃんはやはり眠っていて・・・・・・そして・・・・・・そして・・・・・・ちっとも元気になっているようには見えませんでした。そればかりか、今にも息が絶えてしまいそうに感じられます。きょこちゃんは胸がいっぱいになって病室を飛び出し、教会に飛び込みました。

「神様、よっちゃん、ちっとも治ってません。きょこちゃんの生命を・・・・・・死んじゃってもいいからと言ってお願いしたのに、タイガーが身代わりになって死んじゃったから・・・・・・お約束が違っちゃったの? ねぇ、神様お願い。お約束通り、きょこちゃんが死んじゃってもいいから、よっちゃんを早く治してください。お母ちゃんやおじちゃんや、おばちゃんや近所のみんなが、よっちゃんが治ったと、すごく喜んでいるのにホントは治ってないってきょこちゃん知ってるの。だってお約束が違っちゃったから・・・・・・!!」

 きょこちゃんは小さな声でお話ししていたのですが、こらえ切れず泣きじゃくっていました。静かな教会の中にきょこちゃんの泣き声が響いています。そしてまたその声が余計にきょこちゃんを悲しくさせます。

 どのくらい泣いたでしょう。きょこちゃんは泣き疲れて教会の硬い木の椅子の上でボーゼンと座っていました。

神父様の慈愛

 「もう気が済むまで泣きましたか?」

たった1声でしたが、その言葉に込められた限りないいたわりとやさしさにきょこちゃんはハッとして顔をあげました。

 そこにはいついらしたのでしょう、教会の神父様が立っていらっしゃいました。以前裏のおばちゃんに連れてきてもらったバザーの時にお顔を見たことがあります。信者の方々がこの神父様のお話をしていました。

 神父様があまりにも古い、毛のすり切れたオーバーコートを着てらっしゃるので、信者みんながお金を出し合い、新しいコートをプレゼントしました。ところが新年にみんなが教会に来ると神父様はまた古いコートを着てらっしゃいます。

 新しいコートはもったいないので、よそ行き用にとっておかれるおつもりなのかと思い、どうか普段に着て暖かくお過ごしください、とお願いすると、クリスマスの翌日に不運にも全財産を無くし、死にたくなって訪ねて来た男の人にあの新しいコートを差し上げたのです、と仰ったそうです。

 そこで信者の1人がその人は浮浪者で働かずに教会に来て何か恵んでもらおうとしたに違いないのに、と言いました。すると神父は『あなた方は神のしもべである私に新しいオーバーコートをくださった。それは神様に差し上げたことと同じです。ですから、私がそれを他の困った人に差し上げるのもまた、神様に差し上げるのと同じではありませんか。見たところ私よりずっと彼の方がオーバーコートが必要だったのです。彼には家がなく、私には神様のお陰で住まわせてもらえる、この場所があるのですからね。』そう諭されたということです。

 きょこちゃんの胸の中に染み込んでしっかり残っていました。ですから神様にお願いするのならこの教会でお願いをしよう、と決めたのです。

「泣くだけ泣いたのなら、よかったですね。もし私でよかったらあなたがずーっと毎日お祈りに来ておられたことを話してくださいませんか?」

「はい・・・・・・。」

きょこちゃんは話し始めました。

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