第十四話『きょこちゃん、醤油工場に行く』③

「こんな大人に愛った(あった)から」第十四話

きょこちゃんの「愛」たっぷりのストーリー。

運命の分かれ道のドア

 目の前に3つのドアが並んでいます。このドアのどれかを通って行ったのでしょう。きょおちゃんは迷わず右はじのドアを開けて進みました。どこまでも白い壁の廊下が続いています。3組の姿は見えません。(どおしよう!!)きょこちゃんは少し焦ってきました。と、そこへ壁の中からピョコンと飛び出してきたように人が現れました。白づくめの衣装の工場の人です。きょこちゃんが走り寄るとその人はステンレスの長方形のバット(お盆)を持っています。壁から抜けて出てきたように見えたのは、ぽっかりと開いた入り口が透明のビニールカーテンで仕切ってあったからでした。

 「あっ! あの、コンニチワ!」

「はい! コンニチワ! そこに消毒液があるから手を洗ってね。」

「あ・・・・・・あのう・・・・・・。」きょこちゃんの言葉は聞こえなかったようです。その人は忙しそうに早口でそう言うと、その場から立ち去ってしまいました。

 きょこちゃんは恐る恐るビニールカーテンの中に入り、さっきの人が顎をしゃくって指し示してくれた場所にある、消毒液の入った白い洗面器で手を洗いました。

 「あのう・・・・・・すいません! 誰かいませんか?」

奥に向かって声をかけましたが返事がありません。奥にもまたビニールのドアがありました。他よりも少し暖かく湿った空気です。

「コンニチワ! 誰かいませんか?」返事がないので、またコワゴワとそのビニールのドアを押し開きました。すると! また同じようにドアがあるではありませんか!

「まるで不思議の国のアリスみたい・・・・・・。」独り言を言いながらそのドアを開けました。

あの・・・・・・すいませんが・・・・・・・・・・・・わあっ!!」

その中は棚が何段にもなっていて、どの台にも木の板箱に入った白いうどん粉の光ったようなものが乗っていました。きょこちゃんが大声を出したので、棚の1番奥の方から白いマスクをかけた白い衣服の人が顔を出しました。

「あっ・・・・・・ごめんなさい・・・・・・みんなのいる所を聞こうと思って・・・・・・。」

「ああ、あなたは? ・・・・・・あっそうか、そうか、工場見学の子だね。どうしたのかな? こんな所で。」

「あの・・・・・・麹菌のお話があんまり面白かったので、ボーッとしているうちに3組の人たちとはぐれちゃったの。」

「なんだ、そうか! ここがその麹菌の部屋だよ。」

「えーっ、ホントにホント?」なんと! きょこちゃんは麹菌の繁殖室の真ん中に立っていたのでした。

「でも・・・・・・でも・・・・・・どれが麹菌なの?」

「この白いのがそうだよ。」

「へーっ! これ?」 きょこちゃんは大入道雲のようなものを想像していたので、ちょっと気抜けしてしまいました。

「だってこれ、ずいぶん小さいじゃない・・・。あっ! そうか! これが麹菌の赤ちゃんで今にもっとずーっと大っきくなるんでしょ?」

きょこちゃんは希望をもって聞きました。

「いや、いや、これ以上大きくなんてならないよ。ちょっとこれをご覧。」マスクのおじさんは外の台の上にあるカバーをとって顕微鏡を覗かせてくれました。そこにはクサビ文字のようなものが動いているのが見えます。

「どうだい? それが麹菌だよ。それがたくさん集まっているのが、あの台の上の箱に入っているものなんだ。」 「そうなの・・・・・・。」

「どうしたの? 面白くない?」

「だって、だって・・・・・・あんまり小さいんですもの。」

「ハッハッハ! 小さくったってすごい力があるんだよ。食物を発酵させて甘くしたり、美味しくしたり、腐らせたりとね。この小さい奴がたくさん増えたら、甘酒や酒、味噌、醤油が作れる。昔の人がよくぞ発見してくれたと思わないかい? これで水あめまで作ったそうだよ。かつては・・・・・・。」

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