第十二話『きょこちゃん、銭湯に行く』④

「こんな大人に愛った(あった)から」第十二話

きょこちゃんの「愛」たっぷりのストーリー。

お風呂上りにまたしてもドッキリ!

お湯から上がると汗がひくまで少しの間、バスタオルを身体に巻いて、みんなは竹をつないで作った縁台に腰をかけて涼みます。

 きょこちゃんが脱衣場に戻ると、よっちゃんとみぃちゃんが2人縁台に座ってフルーツ牛乳を飲んでいました。(あらっ! どうしよう!!)きょこちゃんは内心ドキッとしました。銭湯にはドリンクの冷蔵庫があって、ジュース、サイダー、コーヒー牛乳などが入れてあります。飲みたい客は番台に代金を支払って飲むのですが、妹たちがお金を払うことを知らずに飲みたいと言ったのでしょうか? きょこちゃんは入浴料以外の余分なお金を持っていませんでしたから、困ってしまいました。

「きよみさん! 妹たちったら、フルーツ牛乳飲んでいるんだけど・・・・・・。」

「なあに? きょこちゃんもフルーツ牛乳にする? コーヒー牛乳もあるよっ!」

「あの・・・・・・あのね・・・・・・きょこちゃん、お金を持っていないの・・・・・・。でも・・・・・・あの・・・・・・妹たちがフルーツ牛乳飲んじゃって・・・・・・。」

 きょこちゃんはよっちゃんの湯あたりからずーっと、気が張っていたのですが、今まで何とか持ちこたえていました。けれども牛乳代金をどうしよう、と思ううちに、どうしても涙がこらえ切れなくなってしまいました。

「あら、あら、涙なんかこぼして・・・・・・いいの、いいの。ごめんね、お姉ちゃんに聞かないうちによっちゃんとみぃちゃんにフルーツ牛乳飲ませたりして・・・・・・。でもね、今日はトクベツ!! きょみさんのおごり!! だから心配しないで!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「なによぉ、きよみさんばっかりいい顏しちゃってさ!! じゃぁきょこちゃんにはあたしがおごるよっ! ねっ!?」きよみさんより年の多いお手伝いのおばさんが、そばでカゴを片づけながら言います。

 

「でも・・・・・・。」

「なに、なに、子供は遠慮なんかしなくていいのっ!! あんたたちはまだ引っ越してきたばかりだろう? これはお近づきのしるしだよ。もうあとはしない。今回限りだよっ!」

「はいっ!! じゃぁ、あたしもフルーツ牛乳いただきます!!」

「そう!そう!それでいいんだよ!! はい! フルーツ牛乳!」

「はいっ! いただきます!」 ゴクンと一口飲むとフルーツ味の牛乳が体中染み渡るようです。ゴクゴクときょこちゃんは一気に飲んでしまいました。

「湯上りの1杯は美味しいだろう?」

「はいっ! ごちそうさまでした!」

「あーやん、にゅうにゅう、もっと。」

みぃちゃんは自分の分をすっかり飲み終えると、ゆっくりしててまだ半分も飲んでいないよっちゃんの牛乳を指さして欲しがっています。

 今みぃちゃんは誰のことでも“あーやん”と呼びます。言葉がまだ赤ちゃん語なのです。

「よっちゃん、どうせ残すんだから、みぃちゃんにあげて。」

「やっ。」

「あー、あーやん、にゅうにゅう、にゅうにゅう、あーやん。」言いながらみぃちゃんはよっちゃんがしっかり握っている牛乳ビンをつかみます。

「うん、うん、やぁーだ、みぃちゃん、やぁーだ」

「よっちゃん、みぃちゃんのお姉ちゃんでしょ? ちょっとだけ分けてあげてよ。」

「やぁーだぁ、よっちゃん、みぃちゃんのお姉ちゃんじゃないもん。お姉ちゃんがみぃちゃんとよっちゃんのお姉ちゃんだもん。」よっちゃんがそう言っている間に、みぃちゃんはよっちゃんの牛乳に口をつけてしまいました。

「あーん、やだぁ。」

「にゅうにゅう、にゅうにゅう、もっと。」手足をバタバタさせるみぃちゃんを抱き上げて牛乳から引き離すと、みぃちゃんをエレベーターをして遊ばせ始めました。

 抱っこしている手を少しゆるめて、下に落ちかかったみぃちゃんをすぐにまたギュッとだっこするのをエレベーターと言って、みぃちゃんの1番のお気に入りの遊びです。

「よっちゃん、早く飲んじゃって。」体力のないよっちゃんは小食で、飲むのも食べるのもゆっくりです。

 それに比べてみぃちゃんはまだ2歳なのに、体重はよっちゃんより重く、ずっしりとしています。もちろんその分食べたり飲んだりも早い訳で、いつもゆっくりのよっちゃんの分を欲しがるので、きょこちゃんは遊ばせて気をそらさなくてはならないのです。

「ねぇ、早くしてぇ! お姉ちゃん、もう力が入んない。」

「さぁ! みぃちゃん、おばちゃんとお庭の金トトみましょうか?」

見かねたきよみさんがみぃちゃんを抱いて脱衣場の横にある小さな坪庭金魚を見せに行ってくれました。

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