第十二話『きょこちゃん、銭湯に行く』①

「こんな大人に愛った(あった)から」第十二話

きょこちゃんの「愛」たっぷりのストーリー。

妹たちとお風呂屋さんへ

 きょこちゃん一家が世田谷の家から下町に引っ越して来て困ったことがあります。古い2階屋で1階はラーメン屋食堂が半分と、もう半分に茶の間とトイレとお風呂場という間取りでしたが、お風呂が壊れていて使えなかったのです。

 お父さんは大工の棟梁だったので『すぐ直すよ』と言って入居したのですが、お客さんのお仕事優先ですから使えるようになったのはずっと何年も後のことでした。

 そんな事情に加えて、大工見習いの人たちのお世話しかしたことのなかったお母さんが、ラーメン屋食堂を経営するはめになってしまったのです。外食などの経験がなかったお母さんですから大パニック!! きょこちゃん一家の暮らしはすっかり変わってしまいました。

 そんな訳で、小学校2年生のきょこちゃんでしたが、5歳のよっちゃんと2歳のみぃちゃん2人の妹を連れて銭湯に行くのが毎日の日課になりました。銭湯は家から歩いて15分くらいの所にあり、午後の3時から深夜12時までの営業です。

 ラーメン屋食堂は不慣れなお母さんにとっては大変苦労でしたが、毎日5時頃から10時頃までたくさんのお客さんで混み合って大忙しでした。ですから、早めに夕食を済ませたきょこちゃんたち3人の子供が、5時から銭湯に行ってくれると大助かりで毎日決まった時間に出かけることになっていました。

 プラスチックのバケツに石けん、シャンプー、リンス、タオル、そしてみぃちゃんのジョーロ、よっちゃんのお人形さんを入れて、その上にバスタオルと3人分の着替えを乗せ、それをまるごと風呂敷に包んで2人の妹を連れて家を出ます。

 行きはよっちゃんもみぃちゃんも元気はつらつ。3人は手をつないで歌を歌ったりしながら商店街を抜け銭湯まで直行します。

 銭湯は女湯と男湯に分かれていて、真ん中に番台があって、そこには下町中の人のことを知っているおばさんが座っています。

「いらっしゃい!」

「こんばんわっ! 子供1人お願いします。」小学生料金を支払うと、板張りの脱衣場でカゴをもらいます。丸い藤のカゴに1人ずつ脱いだものを入れてから、新しい着替えをその上においてバスタオルをかぶせてからお風呂場に入ります。

 

「自分の脱いだものがグチャグチャになっていたら、他の人が気持ち悪いからね」と、きよみさんが教えてくれました。

 この銭湯にはきよみさんの他に3人の人たちが働いています。脱衣カゴを片づけたり、浴場の椅子や桶を片づけたりする他に、お年寄りや赤ちゃん連れのお母さんのお手伝いをしてくれる人です。

 赤ちゃんには赤ちゃん用のベッドが5台あります。お母さんが先に入り身体を洗い終えると、赤ちゃんの着物を脱がせてお母さんに手渡して、お母さんが赤ちゃんを洗い終えるとまた受け取って、ベッドの上に広げておいたバスタオルの上に寝かせます。その後よく拭き、シッカロールをはたいてオムツをしてから着物を着せてくれるのです。

 3時の開場から5時くらいまではそういうお客さんが集中していることをきよみさんから教わりました。

「その時間を外して来ないと、あなたのところのおチビさんたちの着替え、なかなか手伝えないのよ。」

「それからね、8時以降は夕食終わってお年寄り連れが多いから混むわよ。」そんなことも教わっていました。

 ですから3人はそのどちらの混雑にもかからないちょうどよい時間に銭湯に着くようにしています。きょこちゃんのように小さな妹連れの子供はいませんが、この時間帯は子供連れの家族でいっぱいです。

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