第十話『おじちゃんを飼ってください』⑤ 完結

「こんな大人に愛った(あった)から」第十話

きょこちゃんの「愛」たっぷりのストーリー。

おじちゃんの引っ越し2

「えーっ! ダメなの?」

きょこちゃんがベソをかきそうな顔になったので先生は急いで話を続けました。

「これからね、先生はこの人とじっくり話をして、いろいろ決めようと思うんだよ。その方がいいと思うんだけど、どうします?」

おじちゃんの方を見ると、おじちゃんはうなずきました。

「今夜は宿直室に私と一緒に泊まってもらうことにするから、とりあえず、きょこちゃんは心配しないで帰りなさい。お家の人が心配されるよ。あまり遅くなると。」

「先生・・・・・・。」

きょこちゃんは先生の目をじっと見ました。

「ン?」

やさしい眼差しでこちらを見てくれています。

「大丈夫ね?」

「ああ、大丈夫だ。」と先生。

「おじちゃん!」

「はいっ!」

「大丈夫ね?」

「うん、大丈夫だよ。」

きょこちゃんはとっても安心な気がしてきました。先生とおじちゃんの目の中に大丈夫を読みとったのです。

「じゃぁきょこちゃん帰ります。あっ、でも、おじちゃんのごはんは?」

「大丈夫、大丈夫、先生がついているから・・・・・・さっ、心配しないで帰りなさい。」

「ハイッ!」

その後宿直室で先生とおじちゃんは語り合いました。あとで知ったその内容はこうです。

絵描きだったおじちゃんは実は大学の美術の先生でした。戦争中、みんなが戦争に行きたくなるような絵を描くように軍から命令されたのですが、命を落とす人がたくさん出る戦争には反対だったので、軍の手先のようなことはできないと、逃げて隠れていました。

そのうちに空襲で家も野も焼けてしまい、親戚や家族の消息も分からなくなってしまいました。隠れて暮らしていたので身分を証明するものが全く無く、何より逃げていたことについて、とても悪いことをしたと思い込んでいました。

ですから自分は世の中に出ることをしないで、戦争で亡くなった人たちの供養をしながら、人の裏で生涯生きていこうと思っていました―――。

おじちゃんは3日間宿直室にお泊まりして、おじちゃんのお母さんだけは生きのびて三重県で暮らしていることが分かったので、そちらへ行くことになりました。(先生の手配で見つけてくださったのです。)

さよならおじちゃん、こんにちはネコちゃん

お別れの日おじちゃんは小さな箱をきょこちゃんに託しました。そこには小さなシマトラの猫と黒猫が入っていました。

「きょこちゃん、いろいろありがとう! きょこちゃんに飼ってもらえ?ておじちゃんはとっても幸せだったよ。きょこちゃんに飼ってもらったこと、きっと生きている限りわすれないよ。この子猫たち、今朝広場に捨てられていたんだ。ようやくよちよち歩き始めたところだから、このまま置いておくと死んじゃうと思うんだ! おじちゃんが連れていきたいけど、汽車で連れていったらやっぱり死んじゃいそうで・・・・・・。きょこちゃんなら世話してくれるよね?」

「うん、飼ってたおじちゃんがいなくなったら、また飼うものが無くなるもの・・・・・・。大事に飼うわ。」

その後きょこちゃんはおじちゃんと2度と会うことはできませんでした。なぜなら、三重へ帰ってお母さんと会い、しばらくしてお母さんが、その少しあとにおじちゃんも亡くなったからです。でももちろんそのことはきょこちゃんには伝えられず、教務の先生だけしか知りませんでした。

シマトラの猫はタイガー、黒猫はケニヤという名前を付けました。その頃きょこちゃんがおじちゃんの紙芝居から興味を持って熱中していた“少年ケニア”からとったのです。

そしてこの子猫たちは広場に土管がなかったので家に連れて帰り、暫くは誰にも気づかれず押し入れで飼っていました。

そしてこの猫たちはやがて大きなお役目を果たすのですが、その話はまた後日に。

 

おわり

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