第九話『きょこちゃん、よっちゃん、汽車に乗る』④

「こんな大人に愛った(あった)から」第九話

きょこちゃんの「愛」たっぷりのストーリー。

無賃乗車発覚!

「はいっ!! 切符を。」

「えっ?」

「君はいくつだ? 学校に行ってないのか?」

「はいっ!! きょこちゃんのことね、1年生よっ!! 6歳です!! こっちは妹のよっちゃん、3歳なの。」

きょこちゃんは胸を張ってキチンと答えました。すると・・・・・・、車掌さんは困ったお顔になりました。

「切符はどうしたの? 学校に行っている子は切符がいるんだよ。子供切符が。それから、子供切符では、学校に行ってない子を連れて乗車できないんだよ。大人と一緒なら学校に行ってない子を2人まで連れて乗れるんだけどねぇ。弱ったなぁ。」

きょこちゃんのお母さんは自分が子供の時切符を使って汽車に乗った経験がなかったし、去年の法事でお父さんの実家に行った時は、きょこちゃんとよっちゃんの2人を連れて行っても大丈夫だったので、小学校に入ったら切符がいるとは知らなかったのでしょう。

「あのね、きょこちゃん、今、学校に行ってないのよ。夏休みですもの。」

雲行きが怪しそうに感じたきょこちゃんは真剣に説明しようとしました、が、そばでよっちゃんがきょこちゃんの手に掴まってメソッとし始めています。

「しょうがないなァ、こんな小さな子供2人を無賃乗車させるなんて、親は何を考えているんだろう、お父さんかお母さんは?」

「お父さんはお仕事よ、決まっているでしょ。お母さんはね、赤ちゃんがいるし、職人さんたちのお世話したりで大変なの。それにこの妹のよっちゃんは暑さに弱いから、暑さ負けしちゃったら困るでしょ? だからきょこちゃんが田舎のおばちゃん家(ち)に連れて行くのよ。」

きょこちゃんはお父さんやお母さんが悪く思われたくなくて毅然とした態度で答えました。

「しかし、弱ったなァ。大人もついていない上に無賃乗車させる訳には・・・。」

車掌さんは帽子を脱いで頭をかきました。

「いくらです?」 

「えっ?」

「だから、子供料金はいくらなんです?」

「はあ? えーとね、君どこまで行くの?」

車掌さんがきょこちゃんに行き先を尋ねて料金を調べると、前の席のおじちゃんが黒い革財布をとり出して支払ってくれました。

「えっ? ええっーー!!」

車掌さんは心からほっとした顏で帽子をかぶり直すと

「ありがとうございます!!」

おじちゃんに最敬礼しました。

おじちゃんいっぱいありがとう

「はいっ! 切符だよ、無くさないようにね。」

パチンとハサミを入れて、かすかに印刷のにおいのする「とき色」の切符!!

「わあーっ!! よっちゃんもォ!! よっちゃんもォ!!」

よっちゃんは「パチン」をしたくてたまらないのです。

「じゃぁ、1回だけだよ。」 

「わあーい!! おっおもーい!!」

車掌さんがパチンのハサミを持たせて使用済み切符を1枚切らせてくれました。

「ムフフ・・・・・・ウフフ・・・・・・。」

「ありがとうございます!! よっちゃん、よかったわねぇ。」

「うん! あっ、アイスクリームだっ!! アイスクリーム買ってぇ!」

今度はもう、「アイスクリーム、エ~~~ェ、アイスクリーム」というアイスクリーム屋さんに気がとられています。

車掌さんは「じゃぁ気をつけて」と、言って立ち去ってしまいました。

「アイスクリームを2つ、カップのを。」

前のおじちゃんがアイスクリーム屋さんを呼び止めて注文しました。アイスクリーム屋さんが首から下げた箱のフタを開けると中から白いガスがふわぁ~っと現れました。

「わぁーっ!! 浦島太郎みたい!!」 

「はいっ! カップアイス2個」

白いカップに入ったアイスクリームを2つと、細長い紙袋に入った木のヘラのスプーンを2本受け取ったおじちゃんはそれを1つずつ、よっちゃんときょこちゃんにくれました。

よっちゃんは待ってましたとばかりにフタを開けます。

「おじちゃん、ありがとう!! よっちゃんはまだ小さいから全部食べられないの。だから、残ったらきょこちゃんが食べるから―――これはおじちゃんがどうぞ。」

そう言い終わる前にビタッ!! よっちゃんがアイスクリームのフタを飛ばしてしまいました。そして今度はおじちゃんの額に貼りついたのです。

「あーっ!! ごめんなさい!! ごめんなさい!!」

「きょこちゃんいいんだよ、そんなに気を使わなくって。」

おじちゃんはさっきとは別人のように見える笑顔で額からアイスクリームのフタを外しながら言いました。

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