第九話『きょこちゃん、よっちゃん、汽車に乗る』③

「こんな大人に愛った(あった)から」第九話

きょこちゃんの「愛」たっぷりのストーリー。

おじちゃんとの出会い

よっちゃんを窓側にして進行方向を背にしたお席です。向かい側には眼鏡をかけキチンとした男の人が本を広げて座っていました。

「コンニチワ!」 

「・・・・・・。」

本に集中しているのか、その男性は挨拶には応えてくれませんでしたが、とにかく列車に無事に乗れただけできょこちゃんはニコニコしていました。

(あとは加代子お姉ちゃんが待っていてくれる高崎まで乗っていれば着いちゃうんですもん、安心だわ!)
そう思っていました。

ガタン、シュー ガタン、シュー ガタン、シュッ、ガタン、シュッ、

ガタン ガタン ガタン ガタン 汽車が動き始めました。

「わぁーい!」 

「しぃーよっちゃん、汽車の中はお家と違うんですから静かにしてね。」

よっちゃんは少しの間静かにしていましたが、「あっ!」きょこちゃんは、はっと気がつき心配になりました。よっちゃんは車に酔うたちなので静かにしている時は酔っているのかもしれません。

「よっちゃん、大丈夫? 気持ち悪くなぁい? お窓開けようか?」

「うん。」

汽車の窓は上下にスライド式で左右にレバーがついています。開けようとして両手をいっぱいに広げましたが、きょこちゃんの手の長さではレバーに届きません。左右同時にレバーを引かなければ窓は開けられないのです。

「あのう・・・・・・すみません。窓を開けるのを手伝ってくださいナ。」

きょこちゃんは読書の邪魔をして悪いな、と思いながら恐る恐る前の席の男性に頼んでみました。男性は特に感情のない様子で窓を簡単に開けてくれました。

「ありがとうございます!! きょこちゃん一生懸命したのに手が届かなくって・・・・・・、大人はいいな、そんなに長い手があって・・・・・・おじちゃんの手は特に長くていいわね。」

よっちゃん大はしゃぎ

よっちゃんはご機嫌です。お人形をおぶったまま一方の手でさっきブランコさせた(忘れた)お人形に、窓の風を当てて楽しんでいます。どうやらよっちゃんは田舎の家に着くまでお人形をおぶったまま下ろさないつもりのようです。なぜって、迷子になると困るから!! です。

「ふぅっー」

ようやくゆっくりできると思ったその時、

「あーっ!!」

よっちゃんがうっかり手をはなしたお人形が風圧で飛び、目の前のおじちゃんの顔にビタッとぶつかってしまいました。

「あーっ! ハハハハハハ。」

よっちゃんは大喜びでしたが、きょこちゃんはドッキリ!!

「ごめんなさい!! ごめんなさい!!」

でもその後も退屈したよっちゃんが何回も同じことをするので、

「よっちゃん!! だめでしょ!!」

きょこちゃんがよっちゃんの手を掴んできつい言い方で叱ると

「う、う、う、う、お母ちゃんのとこ帰りたい・・・・・・グスッ!」

泣きべそをかき始めてしまいました。

「あっ、いいから。」 

「えっ!」

いま、確かに前の席のおじちゃんの声だと思ったのですが、けれどもおじちゃんは本を読んでいる姿勢のままです。そして、よっちゃんが本格的に泣こうかどうしようか迷っているうちに車掌さんが回ってきました。

「わぁ!! かっこいい!!」

車掌さんは黒い制服に黒い帽子、金色のバッジをつけています。

「兵隊さん?」

よっちゃんが聞きます。

「兵隊じゃない!!」

今度もまた、前のおじちゃんの声がしました。でも、何か怒っているみたいだし、兵隊、という時の調子にひっかかるものがある感じです。

「切符を拝見。」

車掌さんが帽子のつばに手をかざす挨拶をしていました。前の席のおじちゃんが黙って切符を取り出すと、車掌さんがパチンとハサミのようなもので切符に印をつけ、またおじちゃんに戻します。

「わぁっ!! かっこいい!!」

よっちゃんは車掌さんに見とれています。

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