第八話『きょこちゃん、学校に行く』⑧ 完結

「こんな大人に愛った(あった)から」第八話

きょこちゃんの「愛」たっぷりのストーリー。

植草先生

チャイムが4つ鳴っていよいよお給食です。うえくさ先生は、よっちゃんの前にもみんなと同じようにトレイを置いてくださいました。

それは先生の分なのでしたが、先生はご自分のお席からお茶を召し上がりながらニコニコみんなをみて1人1人に話しかけて、何事もなかった様子です。

(その時先生は、よっちゃんがこれから毎日お給食にやってくるようになるとは思っていらっしゃいませんでしたが。)

「そーか、さいとうさんは1人っ娘なのか。」

「その犬は、それからどうなった?」

「お母さんにほめられてよかったね。」

-先生が皆の話を興味深く、面白がって聞いてくださるので誰もがみんな幸せな気持ちで学校がとっても楽しい所だと思うようになりました。

うえくさ先生は教頭先生です。でも今年は特別にさくら組を受け持ってくださいました。

来年は定年になります。定年になっても用務員のおじさんになって学校に残りたいって仰っています。それだけ学校や生徒たちみんなが好きなんだそうです。

先生は、いつもきちんと背広を着てネクタイを締めていらっしゃいます。その胸には、みんなと同じ白いハンカチとさくら組の名札がついています。

「先生はね、みんなと同じさくら組なのが、とっても誇りだからだよ。」

とニコニコ顔で話してくださいました。 誰かが間違って花びんを割ってしまった時や、トイレに行くのが間に合わずおもらしをした子がいても、先生のニコニコ顔は変わりませんでした。

でも、1度だけ先生が怒られた ことがありました。 テラスの前の水飲み場に、お乞食さんが入ってきた時のことです。上級生の誰かが石を投げて遠まきに

「きたないなァ」 「出てけよっ!!」等とはやし立てていました。

さくら組のみんなも窓から身をのり出して「きたないわねぇ」とか「キャーッ」とか言いながら騒いでいました。

そのうち騒ぎを聞きつけて先生と用務員さんがかけて来ました。先生はきたない身なりのおばあさんに深々と頭を下げると、

「 生徒たちが大変失礼なことを―――申し訳ありません。」

そして、用務員のおじさんに「さぁ、あちらにお連れしてください。」 と仰いました。

全員、急にシーンとなって校庭に落ち葉がカラカラ舞う音が聞こえるほど、静まり返ってしまいました。 立派な身なりの先生が乞食のおばあさんに対した態度にみんなショックを受けてしまったのです。 2人が用務員室に姿を消した時、先生は涙をうかべていらっしゃいました。

「私だって、満州から引き上げてきた時は、あんな身なりだった・・・。でも、人を見なり
で判断したり、自分の方がえらいだなんて思うのは、人間としてとっても恥ずかしいことなんだ。弱い人、困っている人をいじめるのは、卑しい、卑怯なことなんだよ。自分と違うからといってどこかが変だからといって、いじめたり、馬鹿にするのは悲しいことだよ。絶対 に、絶対にしてはいけない!!」

先生は怒っているようでもあり、とっても悲しんでいるようでもありました。きょこちゃんはなぜだか分かりませんが、この言葉は生きている限り忘れないと思いました。

「さくら組は誇り」と仰った先生の、あの笑顔が思い出されて「ごめんなさい」きょこちゃんは思わず泣き出してしまいました。それでもきょこちゃんは、うえくさ先生と同じさくら 組でよかったなァと嬉しくも感じていました。

それから突然、倉田のおじいちゃんとイッカのことを思い出してしまいました。今の出来 事と全然関係ないようなのに、なぜだか、すっごくつながって思い出されました。

「息子を捜しに行くから、心配しないで学校に行って、しっかり勉強するように。」

―――と言い置いてくださったおじいちゃんに、きょこちゃんは泣きながら誰にも聞こえ ないよう小っちゃな声で呼びかけました。

「ありがとう・・・。きょこちゃん、学校に来て本当によかったわ・・・。」

 

 

おわり

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