第八話『きょこちゃん、学校に行く』⑤

「こんな大人に愛った(あった)から」第八話

きょこちゃんの「愛」たっぷりのストーリー。

きょこちゃん、学校行かない

イッカは、とうとう見つかりませんでした。そして、イッカがいなくなってから1ヵ月後おじいさんが亡くなりました。ゲンクロウが1晩中悲しそうに鳴き通していたそうです。

「あの鳴き声が耳に残ってねぇ。」と大沢のおばさんが話に来ました。

おじいさんは大沢さんに、自分に万が一のことがあったらきょこちゃんには息子を探しに行くから、心配しないで学校に入ってしっかり勉強して、と言ってくださいと伝言されました。

「偏屈な人だと思っていたけど、人は見かけによらないんですねぇ。あの人の望んだとおり 苦しまず、ポックリ逝けて、まあ、幸せだったんじゃないですか。」

おじいさんの遺言でお葬式はしませんでした。ゲンクロウは遠い親戚の人が連れて行ってしまいました。 きょこちゃんが、おじいさんの家に行ってみると板が打ちつけられていました。きょこちゃんの桜の木にはもう蕾がついていましたが、きょこちゃんは桜の木に向かって文句を言いました。

「おじいちゃんも、イッカもゲンクロウもいないのに、どうしてあなたはへっちゃらなの。」

帰ると、2週間後に控えた入学式用に揃えてあるランドセルやお洋服をみんな、押入れにしまってしまいました。毎日、ランドセルをしょったり、お洋服を着たりして、とても楽しみにしていたのに、今は、もう学校なんか、行かないと決めていました。年をとったのを治す薬を発明するために、学校に行くはずだったのに、もう、その必要がなくなってしまったと思ったからです。 もともと、よっちゃんを置いて1人で学校に行くのなんか、したくないことだったんですもの、ときょこちゃんは考えました。翌朝起きてみると前歯が1本抜けていました。このところ、ずーっとグラグラしていたのです。

「やぁ、きょこセンセ、歯っかけばあさんになったなァ。」と八郎おじちゃんがからかいます。

「わぁ~ん!! あ~ん!! きょこちゃん、学校行かない!!」

ずーっと昨日から今日まで我慢していたのに、急に悲しくなってしまいました。

「まいったなァ。ごめん、ごめんよ、きょこちゃん。おじちゃん、からかって悪かった。そ んなに泣くなんて・・・」

「きょこちゃん、学校行かなぁい!! あ~ん!! あん。」

「どうしたの。 何事なの?」

「まいったよ、姉さん。ちょっとかまったら、ごらんのとおり。」

「どうしたの? 歯がぬけたの? あらっ、よかったじゃない。グラグラしていたんですか ら、きっと大人のいい歯が生えてきますよ。」

そんなんじゃなくて、そんなことじゃなくて・・・でも・・・おじいちゃんのことで泣いているって知られたら、何となく、おじいさんがかわいそうな気がして、おじいさんが悪く思われるようで・・・・・・。きょこちゃんは、理由も言わずに、ずーっと泣き続けていました。

お宮のおばさんに「きょこちゃん、学校に行かない!!」大泣きしてから、何日も経ちましたが、その気が変わらないのでお母さんはとても心配していました。

「1度言い出すと、テコでも動かないんですから困ってしまう。」とお父さんに話しました。

ある日、お宮のおばさんが訪ねてきました。お宮のおばさんとは、神社の宮司さんの奥さんのことです。きょこちゃんの両親のお仲人さんだったので、時々遊びに来てくれます。

(今回は、お父さんかお母さんが相談したのかも知れません)

お宮のおばさんは、いつもお着物でお髪をきちんとセットしていて、ヒョーキンな楽しい人です。人から相談されたり頼みごとをされるのがとっても好きです。

「聞いたわよォ。きょこセンセイ、学校行かないって、言っているんですってぇ。どうしてぇ?おばちゃんに教えてよ。あらっ、いやなの。まっ、いいわよォ。今日はそんなことより、踊り教えたげるから。さっ、このお着物を着て!! あらら、ぴったり!! それでは、いい?」

ほって ほって またほって
かついで かついで あとさがり
おして おして
ひらいて チョチョンがチョン
月が出た 出た
月が出たぁ ヨイヨイ
ミイケ炭鉱の 上にィ出た
あんまり エントツが高いので
さぞやお月さん けむたかろ
さのヨイ ヨイ

踊りとは、炭坑節でした。

居間の掘りごたつの周りを、おばさんを先頭にきょこちゃんとよっちゃんが真似ておどり歩きます。何十回やったでしょうか。よっちゃんは疲れて目が回って寝てしまいました。

お宮のおばさんが、 「合格!! きょこちゃん、合格よっ!! おめでとう!! バンザイしましょう!!きょこちゃん、合格おめでとう!! バンザーイ!! さっ、きょこちゃん、気分はどう?この炭坑節、合格できた子は、小学校も合格!! 文句なしに入学できるのよォ!!」

大喜びで言いました。

「ほんとう? おばちゃん・・・だけど・・・だけど・・・」

きょこちゃんは、誰にもお話しなかった、おじいちゃんとのことをお宮のおばさんには、話してもいいと思いました。何だか、聞いてほしくなったのです。

「うーん、そうデシタカ。でもねぇ、倉田のおじいさんが言い残した言葉の方を守らなきゃいけないんじゃないかなァ。それにね、炭坑節、踊る時ね、おじいさんがお月さんで見てるって思って踊るのはどう? きっと、おじいさんには見えるんじゃないかしら? そしたら、こーんなに上手に踊れるきょこちゃんをうれしいなって、喜んでくれると思うんだけど・・・。」

きょこちゃんが話し終わると、おばさんは、そう言いました。

「どうするの? 学校に行く気になった?」

「・・・・・・」

「よぉし、もう1回、踊ってみよう!! 1人で踊って、踊れるかどうか、おばちゃん、テストしてあげるそぉれ、チョチョンがチョン、月がァ~~―――――――――――――。」

きょこちゃんが踊り終わると、

「合格!! 合格!! すごい!! すごい!! これなら、どこの小学校でも行ける!! 太鼓判!!」

「うん、きょこちゃん、池尻小学校よっ!!」

「そーか、よかったねぇ。バンザーイ、おめでとう!! 池尻小学校1年生、おめでとう!!」

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