第八話『きょこちゃん、学校に行く』④

「こんな大人に愛った(あった)から」
第八話

きょこちゃんの「愛」たっぷりのストーリー。

おじいさんといつか

翌日、トウモロコシの種まきに行ったきょこちゃんは、夕方帰ってくるまでには、おじいさんのことをすっかり知って、大の仲良しになっていました。

おじいさんには男の子が1人いましたが、戦争に行ったきり帰ってきません。みんなは死んでしまったと思っているのですがおじいさんとおばあさんはずーっと、ずーっと待っていました。でもおばあさんは待ちくたびれて、とうとう3年前に亡くなってしまいまいたので、 今はゲンクロウとイッカと3人だけで暮らしています。

おばあさんが亡くなる時、「もし私があの世に行って、息子もあの世にいれば夢で知らせ ますよ。もし、夢に出なければあの子は必ず帰ってくるから、待っててやってくださいね。」

そう言ったそうです。

「それで、おばあちゃん、夢に出てきたの。」

「いいや、まだだよ。」

「それじゃ、おじいちゃん家(ち)の子、必ず帰ってきてくれるわね。」

「そうだといいがな・・・。」

おじいさんの家の2匹のシェパードは、警察犬でした。ゲンクロウは、ずーっと前に、イッカは、おばあちゃんが亡くなった後にケガで毒殺されるところをおじいさんが引き取って元気にしました。

よく訓練されているので、「待て」と言うと「よし」と言うまでいつまでもジーっと同じ姿勢で待っています。ボールを投げると必ず取ってきます。

おじいちゃんはどちらの犬も同じように可愛がりましたが、ちょっと後ろ足を引きずったように歩く「イッカ」のことを見る時は、何ともいえないやさしい眼になります。

「おじいちゃん、きょこちゃんね、幼稚園のテスト、落っこっちゃったの。」

「よしよし、イッカに聞いてみよう。ん? なになに? きょこちゃんはおりこうさんだから、幼稚園行かないでお母さんのお手伝いをした方がいいって? そーか、そーか、ほら、きょこちゃん、聞いただろ? イッカがそう言ってるよ。」

おじいさんはいつかおじいさんの男の子が帰ってくると信じていたので、いつも男の子の分もお食事を作っていました。そして、自分のお食事が終わると、男の子の分を犬達にあげていました。

「犬は、本当に利口だよ。息子の分のごはんをやると必ずイッカを先に食べさせて、ゲンクロウは待っているんだ。」

「おじいちゃん、きょこちゃん家(ち)で一緒にお食事しましょ?」

「うん、いつかナ・・・」

おじいちゃんは、いつでも「いつか」「いつか」と言って、一度もきょこちゃんの家にお食事には来てくれませんでしたが、きょこちゃんが学校にあがる年に一緒にお花見しようと 言って桜の木を植えてくれました。

「いつかきっと立派な桜になるよ。」とその時も「いつか」と言って、にっこりしました。

イッカがいなくなった

それからきょこちゃんの所によっちゃんが生まれ、きょこちゃんは毎日忙しくなってしまいましたが次の年も、そのまた次の年も、トウモロコシの種をまく時は必ずお手伝いに行きました。

ある日、大沢さんのおばさんがお母さんに話をしていました。

「倉田さんのイッカがいなくなったんだって、倉田さん、一生懸命捜してるんだけど、見つ からなくって・・・。どっかで毒でも、飲んだんじゃないかなァ。」

「シーッ、奥さん、きょこちゃんが聞くと、大変なので・・・。」

(もうきょこちゃん、きいちゃったもん。)

きょこちゃんは、夢中で走っておじいさんの家に行きました。

「おじいちゃん!! イッカ、いなくなったんですって?」

おじいさんは、縁台に座って、キセルをふかしていました。足元にゲンクロウが座っています。

「おぉっ、きょこちゃんか。犬は利口だからなァ。人間のわからないことも、ちゃぁんとわかるんだよ。」

おじいさんは以前より、ずーっと小さくやさしくなっていました。

「イッカ、帰ってくるわよね?」

「イッカか・・・いつか・・・な・・・・・・」

「おじいちゃん、きょこちゃんが学校行く時までに、きっとイッカは帰ってくるわよね。だって、だって、みんなできょこちゃんの入学祝いのお花見をするって、お約束ですもの。ね っねっ?」

「きょこちゃん、イッカもおじいちゃんも、ゲンクロウも、その頃、いるかどうか分からない・・・。」

「ダァメェ~!! ゼェーッタイ!! ダメェ~!! そしたら、きょこちゃん、学校行かなぁい!! ゼーッタイ、行かなぁい!!」

「おや、おや、お姉ちゃんになってから、すっかり大人になったと思っていたのに、そうやってダダこねるなんて、おかしいぞ。」

「きょこちゃん、ダダじゃないもん。おじいちゃんが変なこと言うのが悪いんですもん。」

「ごめんよ。おじいちゃん、すっかり年とっちゃったんだ。」

「ダメェ!! 年とっちゃ、ダメェ~!!」

「そればかりは、どうしようもないんだよ。」

「ダメェ!! きょこちゃん、学校へ行ったら、どっさりお勉強して、キューリー夫人のようになって、そして・・・そして・・・、年とったの治すお薬、発明するから!! お約束 して!! どっかに行かないって、お約束して!!」

「おーぉ、そうか、そうか、楽しみにしてような。」
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