第五話『おばあちゃんを買いたいの』④

「こんな大人に愛った(あった)から」第五話

きょこちゃんの「愛」たっぷりのストーリー。

きょこちゃん、デパートへ行く

 次の日も、その次の日も雨降りでした。

ようやく晴れたのは、それから5日もたっていました。今日はママ―ちゃんを連れずミルク飲み人形の入った箱をしっかと抱いていよいよデパートに行くのです。あの日以来ミルク飲み人形は箱に戻して1回もさわっていません。

(さわったら、ミルクを飲ませてみたくて、たまらなくなりそうなんですもん。)

と、きょこちゃんは考えたからです。

(でも、おばあちゃんの方が、ずーっといいに決まってる。)

きょこちゃんはおばあちゃんのあの悲しそうにうつむいたお顔を思い浮かべながら、決意を固くしていたのです。

「コンニチワ!!」

「はい? こんにちは。ご用はなんですか?」

きょこちゃんはデパートの入り口できれいな背の高い店員さんに声をかけました。

 ミルク飲み人形の入った箱をかかえ、おばあちゃんの家と反対方向のこのデパートに着くまで、きょこちゃんは休みなくデコボコ道を歩いてきたのでお顔は真っ赤っか、汗びっしょりになっていました。

「その箱は? あら、ミルク飲み人形。どうしたの?」

きょこちゃんは、しっかとかかえてきたミルク飲み人形の箱を店員さんに渡しました。

「これね、材木屋のおじちゃんが買ってきて下さったの。このデパートのでしょ?」

「えぇ、これと同じのを売っていますよ。」

「お姉ちゃん、デパートの仕入れのこと、ぜーんぶわかる?」

「えっ? 仕入れ?」

「ねぇ、わかる?」

「それは・・・ちょっと・・・、ねぇ・・・」

「じゃあ、そういうことぜーんぶわかる人に会いたいの。」

「店長さん・・・にですか?」

「だぁれでも!! 仕入れのこと、ぜぇんぶわかる人なら。」

「ちょっと、待っててね。」店員さんは、電話をかけてくれました。

「はい・・・小さな女のお子様が・・・ミルク飲み人形を・・・、はい・・・受付で・・・仕入れが・・・・・・はい、はい。(きょこちゃんに向かって)お名前は? きょこちゃんだそうです。はい・・・はい・・・かしこまりました。」

「きょこちゃん、おまちどうさま。店長さんはね、今とっても忙しくて、来られないんですって・・・。あっ、がっかりしないでね、大丈夫よ。もっとえらい人が出て来てくれるそうですから。だから、ちょっと待っていてね。わたしのこのイスに一緒にかけて下さいね。どこにも行っちゃダメよ。」

「はいっ」

 女の店員さんはそう言うと、きょこちゃんの手を握っててくれました。

(まるで、きょこちゃんがどっかに行っちゃったら、困るみたいに。)

おばあちゃんを仕入れて!

 ほどなく、背の高い立派な男の人がやってきました。

「きょこちゃん・・・ですね?」

「はいっ」

きょこちゃんは、元気よくイスから飛び降りて、お返事をしました。少しの間、女の店員さんと座っていたのでまた元気が戻ってきたのです。

「このお人形・・・ミルク飲み人形、どうかしたのですか?」

「このお人形ね、材木屋のおじちゃんがここのデパートから買ってきてくださったのよ。すごーく高かったって。」

男の人は、ちょっとニコッとしてから、

「きょこちゃんは、お父さんかお母さんと来たの? それとも迷子かな?」

「うぅん、迷子じゃないもん。きょこちゃん、風の迷子のお話、知ってるけど、だんぜん、それじゃない!!」

「じゃあ、だれかと一緒?」

「うん、じゃなくて・・・はいっ!!」

きょこちゃんはお母さんから、いつも『うんじゃなくて、はいでしょ』と注意されてるのを思い出して慌てて言いなおしました。

「一緒の人は、どこにいるのかな?」

「はい!! ここにいるわ。」

「これは?!! ・・・・・・ミルク飲み人形じゃない?」

「はい!!だから、この子と一緒に来たの。」

「その他に、大人は一緒じゃないの?」

「はい!! お母ちゃんは、お家によっちゃんといるの。お父ちゃんと八郎おじちゃんは、お仕事よ。」

「じゃあ、きょこちゃん、1人で来たの?」

「はい!! そう。」

「きょこちゃん、どこから来たの?」

「あっちからよ! 古い倉庫の向こう側、農場だった所から来たの。」

男の人は、またニコッとしたようです。

「随分と遠い所から1人で来たんだねぇ。お母さん、心配してるでしょう。」

「ううぅん、いつもきょこちゃん、お外で遊んでいるんですもん。お母ちゃん、心配していないわ。」

「そうか、それならよかったけど。どうだい? おじさんがきょこちゃんをお家まで送って行くっていうのは。」

「うーんとね、それもいいけれど・・・その前に、仕入れのお話したいの。」

「えっ!! 仕入れ? 仕入れなんて言葉、どこから覚えたの?」

「あのね、材木屋のおじちゃんが、デパートはお客のほしがる物なら、何でも仕入れて売るんだって言ったのよ。仕入れって、どっかで買ってくることなんですって、それでお客に売るの。だから、きょこちゃんの仕入れてほしい物、仕入れてくれたら、このすんごく高いミルク飲み人形とかえっこしてほしいの。」

「ふぅん、きょこちゃんは、何を仕入れてほしいのかな? みんな、女の子が欲しがるミルク飲み人形より、仕入れてほしいものって、何だろう。」

「おばあちゃん!!」

「・・・・・・!!」

■ランキング参加中■
↓クリックお願いします
ブログランキング・にほんブログ村へ