第五話『おばあちゃんを買いたいの』③

「こんな大人に愛った(あった)から」第五話

きょこちゃんの「愛」たっぷりのストーリー。

おばあちゃんを買いたいの

「ねぇ、お母ちゃん、きょこちゃんのおやつの動物ヨーチ、明日の分とその次の明日の分と、そのまた次の明日の分と、ずーっと明日の分も、いっぺんにちょーだい。」

「えっー? 何を言い出すの。」

「ボロを買う時よりおばあちゃんを買う時の方がずーっと動物ヨーチいるんですもん。」

「えっ? 何のこと? あら、あらっ!! その手なぁに? どうしたの? 真っ黒じゃない、お爪の中まで。お夕食でしょ、洗っていらっしゃい。」

「きょこちゃん、どっさり洗ったもん。でも、きれいにならないの。」

「見せてごらんなさい。あら、どうしてこんなに黒くなってるのかしら?」

きょこちゃんは、お母さんから手をかくしました。玄関のベビーカーにどっさりと、ヨモギ草が積んであるのをヒミツにしたかったからです。

(ヨモギ草のお金は、おばあちゃんは喜ぶけど、大ちゃんには動物ヨーチのお金の方が、いいかも知れないんですもん。でも、両方ともどっさり持って、おばあちゃんを買いに行こう。もらえないなら、買いに行こう。おばあちゃんをいらないって言う、大ちゃんから買ってこよう。)

「ねっ、お母ちゃん、お願い!!」

「だから、どうしてなの?」お母さんは、夕食のしたくの手を休めずに聞きます。

「あーん、あーん。」よっちゃんもお腹が空いて、お母さんのおっぱいがほしい時間です。

「きょこちゃん、お母さん今、忙しいの。だから、よっちゃんをあやしてあげて?」

「あのね・・・」

「きょこちゃん!! 立つより返事でしょ!! はいって言って、いろいろうるさく言わないで、お返事してね。いい?」

「はぁい。」

「はい、きょこちゃん。なぁに?」

お食事の支度が終わって、お母さんはよっちゃんを抱っこしました。コックン、コックンとよっちゃんは美味しそうにおっぱいを飲んでいます。時々ちっちゃなお手々で、お母さんの胸をぱたぱた叩きます。

いつもきょこちゃんは、その手の中に指を入れて、よっちゃんがギュッとにぎってくれるのを楽しみにしているのですが、今夜は、どおしてもお母さんにお話があって、それどころではありませんでした。

「おかあちゃん!! おばあちゃんを買いたいの。だから、動物ヨーチがどっさりいるの。おばあちゃんを買っちゃいけない? もらえないから、買わなくちゃならないの。」

思いがけない頼みごとに、お母さんはびっくりしたようです。

「何を言い出すのかと思えば・・・そんなこと・・・できるわけないでしょ、きょこちゃんたら!! いい? おばあちゃんは買えないの。第一、売ってるはずないでしょ。」

「だってね・・・」

その時、「ただいまぁ!!」お父さんと職人さん達が、お夕食に帰ってきてしまいました。

「はぁーい!!」

お母さんは、急いでよっちゃんを寝かせると、お台所に立ってしまいました。それで、お母さんはとうとう、きょこちゃんの説明を全部聞いてくれませんでした。

「はぁーっ!! お母さん、忙しいんですもん、しょうがないのよねぇ。」

おなかいっぱいになって、ごきげんで手足をバタバタさせているよっちゃんに、きょこちゃんは、ため息をつきながら話しかけました。

みるく飲み人形

 おばあちゃんを買えないまま、何日も過ぎました。

大ちゃんのお母さんは、どんどん良くなって。もうすぐ退院してしまいそうです。このままではおばあちゃん、帰っちゃうっ・・・。

 そんなある日、材木屋のおじちゃんが、ミルク飲み人形を買ってきてくれました。

「すっごーい!!」

ママ―ちゃん、あのヨモギ草摘みの時、足をずってボロッとなっていました。

「ミルク飲み人料!」

長いまつ毛のついた眼は、寝かせると閉じるし、口からミルクを飲ませると、オムツにオシッコをします。

「まぁ、いつもありがとうございます。きょこちゃん、ありがとうを言えたの?」

「ありがとう!! おじちゃん。」

「ありがとうより、おじちゃんにホッペ、チュッてしてよ、きょこちゃん。」

「はぁーい。」

「甘いなぁ、おじさんは。」

きょこちゃんが、ミルク飲み人形に熱中しだすと、大人達はおしゃべりを始めました。

「このお人形、高いんでしょ?」

「あぁ、そうねぇ。それでも、大人気で仕入れるそばから、売れちゃうらしいよ。人形に限らず、客がほしがりそうな物なら、食べ物でも家具でも、何でも仕入れて売るんだね、デパートってやつは、まぁ、アメリカさんのやり方の真似らしいけどね。」

「ねぇ、おじちゃん。何でも仕入れて、何でも売るところって、どぉこ?」

「ほぉらまた、大人のお話に割り込んで、大人の話に口はさんじゃダメッて、いつも言ってるでしょ。」

「いいよ、いいよ、奥さん。」

「ねぇ、どぉこ?」

「商店街の角に、今度できたデパートだよ。渋谷に行く途中の。」

「あの大っきなフーセンがあるところ?」

「大きなフーセン? そう、そう、あそこ。アドバルーンがでてる所だよ。」

「なぁんでも、売ってるの?」

「そうだよ、仕入れた物はね。」

「仕入れ・・・?」

「そう、デパートが売る物を買ってくることを、仕入れというのさ。そして、その買ってきた物をお客に売るんだよ。」

あぁっと、それなら阿部ボクちゃんが子猫たちを拾ってきて、きょこちゃんが動物ヨーチでボロを買ったのと、似てると思いました。

「ねぇ、おじちゃん。デパートはどこからいろんな物、拾ったり、仕入れたりするの?」

「拾う? さぁ、どこかな。多分、いろんな所からだろうねぇ。」

「ねぇ、それなら、おばあちゃんも仕入れてくれるかしら?」

材木屋のおじちゃんは、笑いながら仕事場に行ってしまいました。きょこちゃんは、いただいた高価なミルク飲み人形をギュッと抱きしめて自分が何をしたらいいのか、はっきり決めていました。

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