第三話『きょこちゃん、花を売りに行く』④ 完結

「こんな大人に愛った(あった)から」第三話

きょこちゃんの「愛」たっぷりのストーリー。

きょこちゃん、お花売ってくる

 泣きたくなったお母さんの気持ちを感じたようによっちゃんがお母さんの背中で泣き始めました。お母さんはよっちゃんをゆすってあやしながら、涙声になっていました。

「ねっ、きょこちゃん。今日は帰りましょ?」

「よっちゃん、お腹すいてるって、泣いてるぅ。おっぱいあげて。」

「それがね、疲れちゃっておっぱい出そうにないのよ。お喉も渇いちゃったしね。」

 きょこちゃんは、ウィンドウにいろいろなお料理が飾ってある食堂の方を見ました。
よっちゃんのおっぱいが出ないなんて!! よぉし!!

「お母ちゃん、きょこちゃんがお花売ってきます!!」

「はい」お母さんは、あんまり疲れて考える力もなくなっていましたので、造花の入ったフロシキ包みをきょこちゃんに渡しました。ガラガラ…食堂の戸を開けて中に入りました。

 正面のカウンターにいる、白衣を着たおじさんとおばさんがテーブル席の2人の男の人と話しをしていました。みんなは、ビールのコップを持ったり、おはしを持っていましたが、きょこちゃんが、「コンニチワ!」と言って、大っきなフロシキ包みを抱えて、入ってきた途端、動きをストップさせてしまいました。

「コンニチワッ」また、きょこちゃんは言いました。今度は、全員、きょこちゃんの入ってきた入口の方を見ました。誰か大人が後からついて来るかと思ったからです。

「お嬢ちゃん、どうしたの?」

「お花を売りに来たの。」

「……えぇ!! …」

「………」

「………」

「………」

しばらくしてみんながびっくりからちょっと直って、一斉にしゃべり出しました。

「何だって!!」

「角兵衛獅子じゃあるまいし。」

「どうなってるんだろう!!」

「親は?!!」

その中で、

「ねぇ、どうして、お花を売りに来たの?」おばさんが優しく聞いてくれました。

そこできょこちゃんは、お父さんが建てたお家のお金の代わりにどっさりの造花をもらったいきさつをすっかりお話しました。

「お花を売って、いろんなお買物しないと、お母ちゃん疲れちゃって、よっちゃんのおっぱいが出ないの。今、よっちゃん、おなかすいたって泣いているの。」

「あら、やだよ。お母さん、外にいるの?」

「うん、お外でよっちゃんを『よい、よい』しているの。」

「どうしてお母さんは、一緒に入って来なかったんだい?」

「お母さん、お店に入れないんですって。」

「しようがないねぇ。可愛そうに中に呼んで来よう。」すぐにおばさんは、お母さんを連れて来ました。お母さんは、きまり悪そうにドギマギしています。

「奥さん、赤ちゃんおろして、オムツ替えてやんなさいよ。さぁさあ、こっち、こっち、ほら、ほら。はいっ、抱いててやるから、そこのお茶飲んで…」

奥に、お母さんを連れていったおばさんのテキパキした指図が聞こえます。

「ところで、お嬢ちゃん―――」

「わたし、お嬢ちゃんじゃなくて、きょこちゃんです。」

「ほい、そうだった。きょこちゃん、お花を見せてごらん。」

「はいっ!!」

元気よくフロシキを開くと、のれんのようにつながった、もみじが出てきました。

「ありゃっ!!もみじかよっ!! もう春だってのによ。」

「何だっていいじゃないか。買ってやれよ、大将。」

「奥さぁん、このもみじ一本いくら?」

「はぁ? いくらにしたらいいですか?」

「何だって? ウハハハハハ、こりゃ、いいや。値段もわからないんじゃ、しようがないなぁ。いいよ、いいよ。全部買うよ。」

「ほんとぉ? どうもありがとう!! じゃあ、お魚買ったり、お弁当箱買える?」

「きょこちゃんは、お魚やお弁当箱、欲しいのかぁ?」

きょこちゃんは、さっきまで立ち寄ったお店のお話をしました。
奥から、おばさんが出てきました。

「今、赤ちゃんにおっぱいやってるよ。」

「おっぱい出てる?」

「心配しなくても大丈夫だよ。それより、お父さん。」とご主人に話しかけました。

「この子の家に、まだまだこんな造花、山のようにあるんだってよ。あんた日頃、この商店街のやつらは、皆オレの言うことなら、何でもきくと言っていたよね。
ねぇ、みんなに言って、造花買ってもらおうよ。」

「そうだなぁ…」

「大将、そうしてやれよ。」

「そうだよ。人助けじゃないか。」

「なんだ、なんだよ。皆して、オレのこと責めるなよォ。」

「そうよ、おじちゃん、責めちゃダメよ。下職のおじさん達もね、お母ちゃんを責めたのよ。もっと、怒ってたけどね。だから、きょこちゃんも怒ったの。お父ちゃん、悪くないって。おじちゃんも悪くないものねぇ。だって、お花、全部買ってくれたものねぇ。」

「でも、もっと売れたら、助かるだろ?」

「もっと売れたら?…お金、どっさり集金できるの?」

「そう…だよ。」

「そう、それならいいなァ。きょこちゃん家(ち)、棟梁なんですもん。みんなにお金を分けるお仕事なの。でも、お金がなくてできなかったから、おじちゃん達、怒ったのよ。みんなにお金、分けてあげられたらまたみんな仲良しになるもん。」

おばさんは、両手をパンと合わせました。

「ほぅら、はやく電話して!! 皆に花、買わせなよ」勢いよく、おばさんに押されて、おじさんは電話をかけました。

「もし、もーし、魚辰かァ? あのさぁ、小さな女の子がなァ、―――なんだ、知ってるのか…うん…うん…じゃあ、朝からこの界隈にいたのかァ!! うん…モミジ、モミジだよ。なんか文句あるかァ!! いいじゃないかよ、何だって。賑やかでいいやなァ…」

「もし、もし、金物屋か? 実はさ……」

 何本も何本も、電話をかけてくれたおじさんは汗びっしょりになっていました。

「おーし!! 全部の店でモミジ、飾るぞォ!!」

「さすがっ!!」

「見直したぜぃ。」

「そんなこと言ってないで、お宅らも協力してよ。」

「あぁ、いいとも!!」

 そんなことで、この商店街は、4月だというのにモミジが飾られたのでした。

あっ、そうそう、下職のおじさん達もモミジを運んだり飾りつけを皆でしてくれたんです。

 

おわり

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