第三話『きょこちゃん、花を売りに行く』③

「こんな大人に愛った(あった)から」第三話

きょこちゃんの「愛」たっぷりのストーリー。

建て主さんが!!

 棟梁は、家が出来上がると建て主さんに引き渡します。そして代金を受け取って、職人さん達、下職さん達、皆に分けます。

 その引き渡しの日はお父さんが帰ってくるとお母さんが「おめでとうございます。」と言います。そして、必ずおみやげを買ってきてくれますので、きょこちゃんも、その日を楽しみに待っているのです。けれども、今度の引き渡しの日、お父さんは手ぶらで帰ってきました。いつもなら、皆に分けるお金を数えて、フートーに入れるのに、ドカッと座ったきりです。

「何かあったんですか?」おかあさんが聞きました。お茶を入れながら、「どうかなさったんですか?」とまた聞きました。

「集金できなかったんだ。」

「えっ?」

「集金できなかったんだ。」

お父さんは、また2回、同じことをくり返して言いました。

「どうしてですか?」

お父さんは、ポツリ、ポツリと、建て主さんが昨日交通事故にあって生命も危ないことになっていて、しかも、借りた自動車を壊してしまったのでその弁償をもしなければならないと家族中、泣いていたこと等を話しました。

「―――だから、見舞いを置いてきた。」

「えっ?」

「知らずに集金、行っただろ。そしたら、途方にくれて家族が泣いているんだ。だから、見舞いに有り金、全部置いてきた。集金なんか、できるわけないじゃないか。」

「まぁっ!!」

お父ちゃんは悪くない

それから、すぐに建て主さんは亡くなり、5日後に建てた家の代わりにとダンボール箱がトラック1台分届けられました。中には、造花が一杯つまっていました。ダンボールを部屋に入れて積んでいくと天井まで一杯になってしまいました。

「わぁい、お部屋の中にお城ができたみたい!!」ときょこちゃんは、大喜び!!

そこに、「ごめんください。」大勢の人が訪ねてきました。下職のおじさん達でした。おじさん達は、口々にお母さんを責めているように見えました。(だって、お母さんは、青いお顔で頭を下げているんですから。)

「困るんですよ!! 奥さん!!」

「約束が違うじゃないかっ!!」

「集金できなかったって、どういうことです!!」

「無責任じゃないか!!」

「私等には、関係ないことじゃないかっ!!」

「支払ってくれなきゃ、どうするんだっ!!」

おじさん達がだんだん大声になったので、よっちゃんが目を覚まして泣き出してしまいました。

「ちょっと、失礼致します。」とお母さんが、よっちゃんを抱きに奥へ入った間、ダンボールの陰から、きょこちゃんは、玄関のおじさん達の前に飛び出してきました。こぶしを握りしめ、身体は怒りでブルブルしています。きょこちゃんは、大声で叫んでいました。

「おじちゃん達!! おかあちゃんをいじめちゃだめぇ!! きょこちゃんのお父ちゃん、だんぜん!! 悪くないんだからっ!! おじちゃん達、いつも力を合わせなゃ、家、建たないって言ってたじゃない!! お酒飲んで、お歌唄って、大騒ぎして、仲良しだったじゃない!! なのに!! なのに!! おじちゃん達の方が、ずーっと悪い!! ずーっと、ずーっと悪い人達だわっ!! お母ちゃん、いじめたり、お父ちゃんのこと、悪口言ったり!!きょこちゃんのお父ちゃんは、しようがないお人好しだって、みんな言ってるのに……だから、わるくなぁい!! わるくないんだから!! わるい人じゃないのぉ!!」

お顔は真っ赤になって足を踏み鳴らしながら、わんわん泣き出してしまいました。

「まいったなァ。」

「おじちゃん達は、何も…きょこちゃんのお母さんをいじめたりなんか…」

「いじめてたぁ…あ~ん、あん……」

「ごめん、ごめん、言い方が悪かったね。」

「よっちゃんを起こして、泣かせちゃったぁ!!」

「ごめんよ、ごめんよ。おじさん達、大声出したりして…」

きょこちゃんが、あまり大声で怒っているので、びっくりして出てきたお母さんが、おじさん達にダンボール箱がここにある訳を説明しました。しばらく、おじさん達は話し合いをしていましたが、「困ったなぁ」と帰って行きました。

お母さんは花売りに

翌日、みんなをお仕事に送り出すと、お母さんはよっちゃんにおっぱいを飲ませ、おむつを替えてから、きょこちゃんを連れ、街へお花を売りに行くことにしました。フロシキに包めるだけ造花を包んで、家を出ました。お母さんは、お父さんのお嫁さんになる前は入船町の叔母さんの家のもらわれ児でした。外の世界のことは何も知らず、ただの1度も、食堂などに入ったことがありませんでした。

造花は食堂や飲み屋さん等がよく使うと教わったので、そういうお店に入って、お花を買って下さいと言うつもりでしたが、どうしても、お店に入ることができません。

 商店街を何回も何回も、お店に入れないまま、歩いていました。もうそろそろ、よっちゃんもおなかがすく頃ですし、オムツもきっと濡れていることでしょう。

きょこちゃんは元気そうにしていますがやっぱり疲れて、おなかもすいてきたでしょう。お花が売れたら、お買物をして帰りましょうと、元気よく出てきたのに

「きょこちゃん、お母さん、お花を売って…お花が売れたら、お魚とか、いろいろお買物しようと思っていたんだけれど…お花、売れそうにないの。」

「どうして?」

「だって…どうしても、お花を売りに、お店に入れないんですもの。」お母さんは、もう泣きたくなっていました。

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