第三話『きょこちゃん、花を売りに行く』②

「こんな大人に愛った(あった)から」第三話

きょこちゃんの「愛」たっぷりのストーリー。

アルミのお弁当箱

次にきょこちゃんが立ち止まったのは、金物屋さんでした。壁や棚にザルやお鍋がぎっしり並んでいます。ワゴンには、山のようにお弁当箱が積まれていました。お父さんや八郎おじちゃん達が、毎朝持っていく、お弁当箱と同んなじ!!

でも、きょこちゃんが目を奪われたのは、小さな小判型、銀色のお弁当箱でした。フタには、きれいな赤いバラが描いてあります。

そして隣には、もっと小さな同じ小判型の、きれいな赤いゆりの花の描いたものが!!

『まるで、まるで、お姉ちゃんのお弁当箱と赤ちゃんのお弁当箱みたい!!』

「だんぜん!! ステキ!! ねぇ、お母ちゃん、きょこちゃんとよっちゃんに、このお弁当箱、買って!!」

「きょこちゃんは、お弁当箱使わないでしょ。お弁当箱は、お仕事に行く人が、持っていくものですからね。」

「あらっ、きょこちゃんだって、お仕事に行くんですもん。毎日、お仕事しているんですもん。」

「でも、よっちゃんは赤ちゃんだから、いらないじゃない。」

「よっちゃんなんて、もっといるんですもん。だって、だって…」

ミルクココアをつけたマリービスケットを食べられない、よっちゃんの分を食べられる程大きくなるまで、このお弁当箱にためておいてあげようと思ったのです。

「そうじゃなきゃ、よっちゃん、可愛そうなんですもん。」

「さわっちゃいけませんよ。さぁさ、もう行きましょ。」

「ねぇ、いつ買ってくれるの?」

「そうねぇ、サンタさんに頼んでおきましょうね。」

「でも、この間のクリスマス、サンタさんにミルク飲み人形、頼んでおいたのに…ミルク飲み人形じゃなくって、牛のお人形だったじゃない…牛のお人形なんて、だんぜんがっかりしちゃった!! サンタさん、覚えられるかしら?」

「じゃあ、お誕生日まで待ちましょうね。」

「きょこちゃん、お誕生日にもこの間、しちゃったもの。よっちゃんが生まれてすぐだったから、プレゼントは妹よって言ったでしょ? ねぇ、お母ちゃぁん。」

「その時、きょこちゃん、言ったこと覚えていますか? 妹が来てくれたから、もうなんにも欲しい物はないって、そう言ったでしょ?」

「うん。だけど…その時よりずーっときょこちゃん、大っきくなったんですもの。前に知らなかったもの、知っちゃうんですもん。よっちゃん、生まれた時、お弁当箱なんて知らなかったでしょ? 今、知っちゃったですもん。」

「お返事は『はい』でしょ? それにお口をとがらせて、へりくつ言うの、お母さん、きらいですよ。」

「う…う…ん、じゃなくて、ハイ…」

(それでもお弁当箱、ほしいなァ。せめて、よっちゃんのだけでも!!)

お父さんは棟梁

 きょこちゃんのお父さんは、大工の棟梁です。職人さん達と一緒に、お家を建てるお仕事です。鳶職さん、材木屋さん、瓦屋さん、左官屋さん、ガラス屋さん、建具屋さん、畳屋さん、水道屋さん―――下職さんと呼ばれています―――。

みんなで力を合わせて、家を建てます。

 棟梁の大事な仕事は、お客(建て主さん)と話し合いをしたり、図面を書いて、家を建てる監督をしたり、集金したり、集金したお金を皆に分けたりです。

家の土台に柱が立った時、建て前(上棟式)というのをします。

 その日は、きょこちゃんも八郎おじちゃんに連れられて、「現場」に行きます。

立派な折りがでてお父さんと職人さん達、下職さん達はお酒を飲んで、歌を唄って大騒ぎをしてもいい日です。そういうお仕事の日なのです。

 でも、大騒ぎが始まるときょこちゃんは折りをもらって帰ってきます。

きょこちゃんから折りを受け取ると、お母さんは1段目(お頭(かしら)付きという鯛の塩焼き、カマボコ、羊かんがぎっしり詰まって、フタが閉まらない)の折りを、

「八郎ちゃん、大沢さんのお家にお届けして。」と言います。大沢さんの所には、とっても年をとった、おじいさんがいます。

「きょこちゃん、この折りは、飾り物なんだよ。食べられないから、神さまに供えてもらうよう、大沢さんに持っていくんだよ。」と八郎おじちゃんが言いました。

「ふざけないの、八郎ちゃん。お年寄りから順番にですからね。」とお母さんが、2段目のお赤飯の折りだけ残して、ふろしきに包み直しました。

「ねぇ、どうして、お年寄りから順番になの?」

「若い人ほど、また、食べられるチャンスが巡ってくるからです。」

「ふぅん、でも、飾り物で食べられないんでしょ?」

「そうね、飾り物ね。家にとっては。さぁ、お届けして。」

八郎おじちゃんが、大沢さんから帰ってくると、皆でお赤飯を囲んでお食事です。いつもはお父さんと職人さん達もいるので、賑やかな食卓も今日だけは3人です。

八郎おじちゃんがお赤飯を4等分しました。

「姉さんはよっちゃんのおっぱい分で2人前だよ。あとは僕ときょこちゃんの分。」

「いただきまーす。」…でも、きょこちゃんは、お赤飯のお豆が好きじゃありませんでしたので、大分残してしまいました。そして忙しそうなお母さんの方をチラッとみました。

いつも、「お米は、私たちの口に入るまで、100人の手がかかるのですよ。だから粗末にしたら、目がつぶれてしまいます。」と言われているからです。

でもお母さんが、きょこちゃんの残したお赤飯に目を止めるより前に、八郎おじちゃんが、ぱっときょこちゃんの分を食べてくれました。

「ほっ。ごちそうさまぁ。」

「まぁ、今夜は早いのねぇ。」

「うふ…」

2人は、楽しそうにお顔を見合わせました。

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