第一話『きょこちゃん、川へ行く』③

「こんな大人に愛った(あった)から」第一話

きょこちゃんの「愛」たっぷりのストーリー。

ドンブラコッコ、スッコッコ

きょこちゃんが土手に座って宝箱を開けて、どの時計の針なら魔法の赤いお魚さんが釣れるのだろうと、ニコニコしながらながめているうちに、行きがかり上仕方なくスイカを買ってサブちゃんが帰ってきました。

「さぁ!! 釣りに行こう!」土手の下の川まで降りていくと、さっきここで魚釣りをしていた人は、もっとずっと下流のほうへ釣り場を移していました。

「チャンス! チャンス! あの人が魔法のお魚を釣る針を持っていなくてよかったね。」

夏の暑い太陽が真上に来てギラギラして暑くてたまらなくなってきました。

さっきから、どれだけ時間が経ったのでしょう。いっこうに赤いお魚は釣れません。サブちゃんはつまらなそうなお顔でダンマリしたまま、きょこちゃんが話しかけると、シィーッとしてばかりです。

「きっと、魔法のお魚が消えちゃうのがこわいのね。」きょこちゃんは、川に冷やしてあるスイカにほっぺをつけてみました。

「あー、冷たくて気持ちいい!!」

きょこちゃん、お気に入りのお話しⅡ

ドンブラコッコ、スッコッコ

流れてきた、きた、桃の実を

拾って帰れば、オーヤオヤ

桃の中から、桃太郎~!

大きくなった桃太郎

鬼を退治に鬼ヶ島

犬、キジ、サルがキビ団子

もらって一緒にお供する

きょこちゃんのもう1冊のお気に入りの本で、空で言える桃太郎のお話しを元気よくそらんじながらスイカと遊び始めました。

すると・・・・・。

石で止めてあったスイカの入った袋のヒモ結びがスルリとほどけ、きょこちゃんがつかまったまま川を流れ始めました。

「ワァーイ!」喜びの声を上げようとして、ちょっと生臭いような川の水を飲んでしまいましたが、しかし、そんなことにめげるきょこちゃんではありません。なんだかますますワクワクして、グルグル回りながらスイカごとドンドン流されていきました。

ドンブラコッコ、スッコッコと流れて、下流で釣りをしている男の人の前を通り過ぎました。きょこちゃんと目が合ったその人は、一瞬きょこちゃんを見送ったのですが、次の瞬間「ウワーッ」というような声を上げて、川の中にバシャバシャと飛び込んできました。男の人はスイカの袋のヒモをつかんで、グイッと、きょこちゃんごと持ち上げました。「あー危なかったナ!!」と、男の人は言いました。川はとても深く流れも急だったからです。

岸に着くときょこちゃんとスイカを下ろし、サブちゃんの方に向かって「オーイ」と手を振りました。サブちゃんは、いぶかし気にこちらに向かって歩いて来ていましたが、ビショ濡れのきょこちゃんとスイカが男の人の足元にあることに気付くと、なにやらとんでもなくまずい事になったと直感したのでしょう、まるで悪事の現場から立ち去るかのように途中でクルリとキビスを返し、土手の方に駆け出そうとしました。

「アッ、コラァ!!」男の人は素早くサブちゃんに追いつくと、後からサブちゃんの襟首を捕まえてしまいました。

捕まったサブちゃんは青い顔になって、少し震えているみたいでした。男の人に比べるとサブちゃんの身体の大きさは半分位にしか見えません。

男の人が何か言うより早くきょこちゃんは近くに駆け寄り、男の人のビショぬれのズボンをチョコンと引っぱりました。

「もしもしおじちゃん。すいませんがうちのサブちゃんをいじめないでくださいな。」

「えっ?!」とおじさん。

お父さんがいつも言っていること(『家で働く人たちは家族と同じなんだから、大事に守らなきゃ』)を思い出しながら、ちょっと威厳を持って言ってみました。

橋ゲタの下のおうち

それからしばらくしてきょこちゃんとサブちゃんは、川のちょっと上流の橋ゲタの下にある、釣りをしていた男の人の家に行きました。家といっても、色のハゲたトタン板と古いガラス戸で囲われた小さな小屋のような所です。男の人は、きょこちゃんの濡れたロンパースを脱がして、タオルで包んでくれました。そして、テキパキと濡れてしまった自分の服やきょこちゃんの服を器用にヒモに吊るして干すと、再びスイカを川に冷やしてくれました。

「さぁてと、服が乾くまで、メシでも食いに行くか?」

「うん、きょこちゃん、お腹空いたの。」

「今日は魚が釣れなくて、スイカに乗ったお嬢が釣れたんだ!! 面白いね、魚釣りは!!」

「あっ!! そうだ。魔法の赤いお魚!! ねぇ、サブちゃん、赤いお魚は?」

サブちゃんは・・・と見ると、さっきから青いお顔のまま、なんにも言いません。男の人は、ジロッとサブちゃんを見てから、

「魚は逃げないさ。まずはメシを食ってから。」と言って、きょこちゃんをヒョイっと肩車して、もう一方の手でサブちゃんをつかみ、ノシノシという感じに土手を上がって行きました。

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