第一話『きょこちゃん、川へ行く』②

「こんな大人に愛った(あった)から」第一話

きょこちゃんの「愛」たっぷりのストーリー。

きょこちゃんも行く!

「じゃあね!」サブちゃんは宝箱を受け取るとニヤッとしていこうとしました。

「ねぇ。サブちゃん。サブちゃん、今日はお仕事行かなくていいの?」皆が現場に行っているのに、と思いながら聞きました。

「あぁ、今日の仕事はスイカを買って、川で冷やしてることなんだよ。だから、赤い魚を見つけたんだ。」

「あっ、そっか!」

「じゃあ、行くよ。」

「ねぇ、サブちゃん。赤いお魚釣って、目を見て悲しそうなら、魔法のお魚なんだから川に戻すのよ。」

「うん、うん、わかってるよ。」

「そしてね、女神様が出て来たら、絶対金の針もらっちゃだめなんだからね。」

「うん、わかってるって。」サブちゃんは、お魚が消えちゃうのが心配らしく、ソワソワしているように見えます。きょこちゃんはすっかり心配になってしまいました。というのも、昨日だってサブちゃんはお父さんから

『何度言ったらわかるんだっ!! わかったって言った口がかわかないそばから、お前はすぐウソをつくのかっ!!』と叱られているのをこっそり聞いてしまったのです。(だってお父ちゃんの声、大っきいんですもの。だから聞こえちゃったんですもん。)

「ねぇ、サブちゃん。女神さまにあなたの針は、この針ですかって聞かれたら、『いいえ、違います。』って正直に言うのよ。」

「うん、わかった、わかった。」

「ねぇ、サブちゃん・・・・・。」

「うん、わかったよ、きょこちゃん。早く行かなきゃ魚が逃げちゃうよ。」サブちゃんは、時計の箱を自転車のカゴに入れながら答えました。

「うぅん、やっぱりダメッ! きょこちゃん、女神様に会って自分で言う。」言うが早いか、きょこちゃんはオサルの子のようにピョンと自転車の荷台に飛び乗りました。

「オイッオイッ、いいよ、いいよ、行かなくったって大丈夫だよ。オレが一人で行って来るよ。」

「ダメッ! きょこちゃん、一緒に行くもん。」

「はぁーっ」サブちゃんがため息をつきました。きょこちゃんが口を横一文字にして、ダメッと言った時はテコでも動かないことを、うちで働いていた6ヶ月で知っていたからです。

「シュッパーツ!!」きょこちゃんはウキウキしながら、サブちゃんの背中を荷台から突っつきました。サブちゃんはそれには何もこたえず気が重そうにペダルをこぎ出しました。多摩川の土手に着くと、サブちゃんは自転車を止めてきょこちゃんを抱き上げて降ろしました。

「スイカ買ってくるから、ここで赤い魚を見つけて待っててよ。」と言って、宝箱を自転車のカゴに入れたまま行こうとしました。

「あっ! サブちゃん! 宝箱、きょこちゃんにくださいな。針をとっておくから。」

「いいよ、いいよ、針はとっておかなくて。スイカ買ってきてから、一緒にとればいいよ。」

「じゃぁ、持っててあげるから、宝の箱をくださいな。」

「いいよ~、すぐに帰ってくるから。」

「ダメっ! きょこちゃんが持ってる! 宝箱をくださいな。」きょこちゃんの声に、土手の下で魚を釣っていた男の人が、振り返ってこちらをみました。サブちゃんは仕方なく宝箱をきょこちゃんに渡すとスイカを買いに行ったのですが、実はその時サブちゃんは、時計を売りに行こうと考えていたのでした。

 

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